【令和3年】心の健康づくり計画の義務とは?ポイントや事例、助成金を解説

職場や業務に対して悩みやストレスを抱える社会人は、近年増加傾向です。 厚生労働省の調査によると、強いストレス要因を持つ労働者の割合は、全体の58%にのぼります。 この数値からも、メンタルヘルスが看過できない企業の課題であることは明白と言えるでしょう。 厚生労働省はメンタルヘルスケア基本方針として、「心の健康づくり計画」の策定を義務付けています。 今回は、心の健康づくり計画の詳細と、助成金制度について解説していきます。

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心の健康づくり計画は従業員のメンタルヘルスケアを促す施策

心の健康づくり計画とは、従業員の精神面における健康を守るメンタルヘルスケアの円滑な取り組みに必要とされている施策です。
労働安全衛生法に基づいた、労働者の心の健康の保持増進のための指針(以下、指針)において、策定が義務付けられています。
ひと言にメンタルヘルスケアと言っても、企業ごとに職場環境や従業員の特性が異なる中で、唯一無二の方法を独自で確立するのは困難です。
心の健康づくり計画は、より各社の実情に即した対策を実現する基本方針となります。

メンタルヘルスケアの基本となる3段階のフェーズ

メンタルヘルスケアの基本は、予防、早期発見、復帰支援の3つのフェーズにわかれます。
人事担当者は各フェーズで最適な対応を滞りなく実行していきましょう。

一次予防

最も重要なのは、メンタルヘルス不調を発症させない対策です。
多くの従業員は、自分が不調に陥る訳がないと過信していたり、現実味が感じられず他人事のように捉えていたりする傾向があります。
しかしその先入観は、自身の不調を見逃し症状を増長させる原因です。
そのため一次予防では、日常的なメンタルヘルスケア指導や、積極的な情報発信が必須です。
また、年に1度のストレスチェックも欠かさず行いましょう。

二次予防

しかし、目に見えないメンタルヘルス不調を完璧に予防するのは難しいのが現実です。
そこで二次予防では、不調を早期発見する仕組み作りが重要になってきます。
発見が早期であればあるほど、従業員の負担が少ないうちにケアが行えるため、重症化を食い止めることが可能です。
発見後は、不調者各々の症状に適したアドバイスや支援を見極め、適切に対応しましょう。

三次予防

本来であれば、ここまでの一次・二次予防を徹底するのが理想ですが、なかには休業を要する従業員が出てくるかもしれません。
その際には、三次予防である復帰支援のフェーズへ移行していきます。
従業員本人を中心に、不調者の管理監督者や産業医などと連携しつつ最善の方法を模索し、無理のない復帰へと導きます。

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心の健康づくり計画で推進する4つのメンタルヘルスケア

上記の一次~三次予防を滞りなく適切に実行するには、以下4つのケアが効果的です。
それぞれの理解を深め、企業が担うべき役割を整理しましょう。

セルフケア

セルフケアとは、負担に感じている事柄やストレスの要因に従業員自らで気付き、対処することです。
心の健康づくり計画実践の第一歩は、従業員が自らの心の状態や感情の移り変わりに敏感になり、感じた負担やストレスを解消する術を持つことです。
企業側はストレスチェック結果を踏まえて、従業員が自らの心とうまく付き合えるよう、各自で行えるセルフケア法やストレス解消法のアドバイスを行う立場です。
情報提供や研修の開催、相談フローの確立への取り組みを推進しましょう。

ラインによるケア

ラインによるケアとは、日々の勤務状況を把握する立場にある管理監督者が、部下の些細な変化に気を配ることを指します。
不調に陥る従業員は、皆が皆自覚を持っている訳ではなく、無自覚のうちに負担が蓄積しているケースも往々にしてあります。
そのため、たとえ本人から直接相談を持ち掛けられなくても、いつもと違った言動がないか目を光らせておく必要があるのです。
適切なラインケアの実現には、企業側が管理監督者に対し、継続的な指導を行う必要があります。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、労務担当者などによる、メンタルヘルスケアの総合的な仕組みです。
上記の担当者が連携を取りそれぞれの役割を発揮することで、抜かりなく従業員をケアできます。
なお、指針内で定められている「心の健康づくり専門スタッフ」の該当者が自社内にいる場合は、事業場内産業保健スタッフ等とともにケアを行います。

事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアとは、医療機関や産業保健総合支援センターなど、外部専門機関の利用によるケアを指します。
多岐に渡るメンタルヘルスケア問題に適切に対応するには、その道の経験や知識が豊富な専門家の力を活用するのが賢明です。
この仕組みをうまく機能させるためには、自社内に専用窓口を設けた上で情報や役割を集約させ、その時々に最適な事業場外資源を選択することが重要です。

心の健康づくり計画で策定すべき7つのポイント

上記までの内容を踏まえ、心の健康づくり計画を実際に策定していく形となります。
その際には、以下7つのポイントを盛り込まなければなりません。

1. 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
2. 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
3. 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
4. メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
5. 労働者の健康情報の保護に関すること
6. 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
7. その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること

これらの策定にあたっては、従業員50人以上の事業場は衛生委員会で協議を行い、それ以外の事業場は従業員の意見を聴取できる場を設けます。
企業側の一方的な判断を通さず、労使間で意見共有を行い、自社の実情に即した形を目指しましょう。
また従業員のメンタルヘルスを計る上で重要な、ストレスチェックの実施も明示する必要があります。

心の健康づくり計画を踏まえたメンタルヘルスケア実践のポイント

職場におけるメンタルヘルスケアは、以下のように順序立てることで、円滑かつ効果的な実践が可能です。

1. 心の健康づくり計画の策定
2. 心の計画づくり計画の実行
 ・4つのケアの適切な実施を目指すメンタルヘルスケア指導、情報提供
 ・職場環境や労務関連の状況を把握、改善
 ・メンタルヘルス不調者の早期発見、対応
 ・職場復帰支援
3. 評価、改善
4. 来年度の計画立案

上記はあくまでも一例であるため、自社の背景、状況により臨機応変な対応も必要です。

人事担当者が注意すべきポイント

メンタルヘルスの状態とは、誰しもが一目瞭然な形で表れるものではありません。
そのため、周囲の目には元気で明るい様子に映る人物でも、内心は悩みやストレスを抱えているケースも考えられます。
人事担当者などの産業保健スタッフは、これらの事情を十分に理解しなければなりません。
従業員には仕事以外にも家庭やプライベートの生活がある訳なので、不調の要因=職場環境と一概に決めつけるのは尚早ではあります。
しかしながら、人員配置など労務関連が大きく影響する事実は指針内に明記されているため、労務担当者との情報共有や連携は必須だと認識しましょう。

【実例】メンタルヘルスケアの取り組み内容と得られた効果

いざ心の健康づくり計画を策定しようとしても、現場に即したメンタルヘルスケアの取り組みとはどのようなものなのか把握し、実感できる効果がイメージできなければ、難しく感じるかもしれません。
そこでここでは、メンタルヘルスケアを積極的に推進する企業の実例を簡単に紹介します。

A社:管理職のメンタルヘルスケアに注目、ラインケアの強化に成功

管理職らが自らのリーダーシップ、能力不足に思い悩み、自身を喪失していた。
そこで、以下のような取り組みを実施。

・職場におけるメンタルヘルスケアへの共通意識を伝達
・傾聴スキルやストレス対処法を指導する管理職研修の開催
・個別面談
・ストレス簡易検査の結果分析

これらの取り組みの中で、管理職自身の良好なメンタルヘルスの保持こそが、部下へのラインによるケアを積極的に行う足がかりとなることを実感。
また、傾聴スキルやストレス対処法を身につけることで、以前より躊躇なく部下とのコミュニケーションを持ち、アドバイスが行えるようになった。

B社:「心の相談室」設置で従業員のメンタルヘルスケアへの意識が向上

複数の専門職が集まる職場のため、ルール化しても結局個別対応となってしまい、メンタルヘルス対策に難しさを感じていた。
そこで「心の相談室」を開設。イントラネットでの広報や、各部門へ直接訪問し周知を行った。
従業員の利用のしやすさを第一に考え、以下のような取り組みを実施。

・体験カウンセリング、短時間のお試しカウンセリングの実施
・景色が見える相談室に観葉植物やソファーを設置し居心地の良い空間を構築
・相談室は不調者だけでなく、予防や自己理解に活用できる旨を周知
・メールでの予約受付、イニシャルによる申し込みも許可
・ニュースを作成し全従業員へ配布、ポスターの掲示

実施の結果、従業員からはメンタルヘルスケアを重視している自社に対する信頼感や、自己理解に役立ったという声、管理職のメンタルヘルスケアに対する認識の変化などが見られた。

心の健康づくり計画の作成・実施で助成金が受け取れる

厚生労働省は産業保健活動総合支援事業の一環として、諸条件を満たし心の健康づくり計画を作成することにより一法人につき10万円の助成金を1度に限り支給しています。
過去受給していない企業は以下を確認の上、助成金申請を検討しましょう。

受給のための7つの要件

■企業の要件
1. 従業員を雇用している法人
2. 労働保険の適用事業場
3. 登記上で本店または本社機能を有する事業場

■取り組みの要件
4. メンタルヘルス対策促進員の訪問を受け、メンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づき、令和元年度以降、新たに心の健康づくり計画を作成している
5. 心の健康づくり計画を労働者に周知済である
6. 心の健康づくり計画に基づき具体的なメンタルヘルス対策を実施している
7. メンタルヘルス対策促進員から、心の健康づくり計画に基づき具体的なメンタルヘルス対策が実施されたことの確認を受けている

受給までの流れ

心の健康づくり計画の助成金の受給には、以下のようにメンタルヘルス対策促進員の訪問による助言や支援を受けることが条件です。

1. 産業保健総合支援センターにメンタルヘルス対策促進員の訪問支援を申し込み
2. 心の健康づくり計画の作成に係る助言・支援を受ける(事業場訪問は3回まで)
3. 心の健康づくり計画を作成
4. 心の健康づくり計画を従業員へ周知
5. 心の健康づくり計画の実施
6. メンタルヘルス対策促進員による対策実施の確認
7. 労働者健康安全機構へ助成金支給申請
8. 助成金支給決定通知の受取、助成金受領

提出書類

提出書類は以下の通りです。
少々種類が多いですが、事業場によって不要なものもあるため、詳細は心の健康づくり計画助成金の手引を確認してください。

1.  心の健康づくり計画
2. 心の健康づくり計画助成金支給申請書(様式第1号)
3. 登記事項証明書(商業・法人登記)
  履歴事項全部証明書または現在事項全部証明書
4. メンタルヘルス対策促進員企業訪問報告書(様式第2号)
5. 事業場の労働保険概算・確定保険料申告書の写し
6. 労働保険料一括納付に係る証明書(該当事業場のみ)
7. 振込先の通帳の写し
8. 支給要件確認申立書(様式第3号)
9. 心の健康づくり計画助成金支給申請チェックリスト兼同意書(様式第 4 号)
10. 事業場宛ての返信用封筒(84 円切手貼付)

現在は令和2年度分の申請を受付中

令和3年4月現在では、令和2年度分の取り組みに対する申請を受け付けています。
受け付け期限が迫っているため、申請準備を早急に進めましょう。

・心の健康づくり計画取り組み期間:令和2年4月1日~令和3年3月31日
・申請受け付け期間:令和2年5月29日~令和3年6月30日(当日消印有効)

一次予防を徹底し従業員の健やかなメンタルヘルスを守りましょう

メンタルヘルスケアで最も重要なのは、不調を発症させないための一次予防です。
一次予防を徹底するには、ストレスチェックなど法で定められた義務を形式的にこなすだけでなく、日常的に生のコミュニケーションを重ねることが欠かせません。

学生時代の親しい友人たちとの間柄のように、職場においても相手の人となりが理解できれば、表面的に見える言動からだけでなく、ちょっとした違和感を察知したり関係性の中から心情を予測したりできるようになるでしょう。

指針とは、あくまでも遵守すべき最低限のラインです。
企業、人事担当者はそのレベルにとどまらず、先を見据えた自社なりの取り組みを推進していく役割を担っていることを心に刻みましょう。

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