人事が復職を判断する基準は?休職や復職に必要な手続きや注意すべきポイントとは

病気やケガなどさまざまな理由で休職中の従業員が仕事を再開させる場合には、企業は復職に向けての手続きを行わないといけません。ただし誤ったタイミングで従業員を復職させてしまうと、従業員が再度休職してしまうことがあります。 また休職期間が残っているにもかかわらず退職させてしまうと、従業員から不当解雇で訴えられることも考えられるでしょう。そこで、従業員の休職や復職の際に必要な手続きや企業が注意すべきポイントについて解説していきます。

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従業員が休職する際の手続きや対応

休職とは、雇用を打ち切らずに従業員が一定期間休みを取得できる制度を指します。ただし休職の期間や条件に関する法律上の決まりはありません。各企業が設定した就業規則に則って休職の手続きが取られます。ただし企業によっては休業制度を持たないケースも考えられますので、その場合はどのように対応するかを事前に検討しておきましょう。

休職時に従業員に求める提出書類 

一般的に従業員が休職にあたって企業に対して提出するのは、以下の書類です。

・休職届
・医師による診断書
・傷病手当金申請書
・労災保険の給付申請書(労災対象の場合)

まず、企業は就業規則にしたがって従業員に対して休職届の提出を求めます。またケガやうつ病などで傷病休職する場合には、医療機関で作成してもらった診断書を従業員に提出してもらうようにしましょう。

このほかにも、従業員が傷病手当金や労災保険などを申請することもあります。従業員が傷病手当金を申請するために、企業は押印や記入など申請書の書類対応をしないといけません。

また業務上に被ったケガや病気で休職する場合には、労災保険の給付申請書を従業員が必要になってくるので、企業はその書類の対応をする必要もあるでしょう。

休職者に対し企業が行うべき必要な対応

休職中の従業員に対して企業が行うべき対応として以下の3点が挙げられます。

休職期間の確認

企業は就業規則に認められる休職期間を確認し、従業員に説明します。従業員が用意した診断書に記された休養期間はあくまで目安であるため、認められる最長の休職期間について説明しましょう。

うつ病などの傷病休職だと、症状が軽度ならば約1ヶ月、重度ならば3ヶ月~半年の休職期間が認められるケースが多いでしょう。もっとも、就業規則で上限を定めない企業もあります。休職期間を超えても寛解せず復職が困難である場合には、退職するのが一般的です。

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傷病手当金の説明

休職中も従業員やその家族が生活できるよう傷病手当金の説明をしましょう。先述したように有給休暇ではないので、企業は休職中の従業員に給与を支払う義務はありません。

以下の4つの条件を満たしている場合には、最長で1年6ヶ月のあいだ月給の30分の1の給与額の3分の2の金額が毎日健康保険から支給されます。

・健康保険に加入している
・業務以外で発生した病気やケガで働けない
・病気やケガで連続して3日間休んだのち4日目以降仕事ができない
・休職中に会社が給与を支払っていない

休職中の従業員との連絡手段の確保

休職中の連絡方法を従業員に確認しましょう。休職は復職が前提であるため、傷病休職の場合には回復状況や復職のタイミング、復職後の仕事などについて連絡を取る必要があります。従業員の体調を鑑み、月に約1回メールでの連絡がいいでしょう。

休職だと社会保険資格の手続きは必要ない

 
休職期間中の従業員と雇い主との関係は継続しますので、社会保険資格の喪失に関する手続きは必要ありません。

そのため、厚生年金や健康保険等の社会保険料は休職期間中でも従業員は支払うことになります。社会保険料は通常給与から天引きされますが、休職期間中には会社から給与は支払われないのが一般的なため天引きができないといった問題が生じます。

従業員が休職中の社会保険料の支払いについては就業規則に明記されているのが一般的ですが、明記されていない場合には、休職を認める前に社会保険料の負担について従業員と話し合いましょう。

具体的には会社が立て替えて従業員が復職後に徴収したり、従業員から会社に毎月振り込むなどの方法が考えられます。ただし従業員から社会保険料の支払を拒否されるケースも考えられるので、支払方法について就業規則に明記するといいでしょう。

復職判定の判断基準

休職している従業員が復職を希望したからといって、すぐに復職させてはいけません。復職の判断基準として以下の5つが挙げられます。

就業の意欲があるか

一番重要なのが、従業員に就業の意欲があるかどうかです。従業員自身に就業の意欲がない場合には、企業は働かせることを強制できません。就業規則に定められた休職期間が満了するまで待つ必要があります。

ただし、従業員が働く意欲が出てきたという程度では企業が従業員に対して求める水準には達していないでしょう。従業員が「是非とも仕事をしたい」という程度まで就業の意欲を意思表示するのを目指しましょう。

とくにメンタルヘルス不調による休職の場合には、従業員を復職させるには慎重な判断を要します。再度休職してしまうケースも考えられるので、従業員が本当に働く意欲があり継続できるかを確認しましょう。

規則正しい生活を送れるか

メンタルヘルス不調者の多くは、起床時間や就寝時間が適切に整っていないなど生活リズムが不規則である傾向があります。復職させるためには、休職中に生活リズムを整えてもらう必要があるでしょう。

起床時間や就寝時間、食事や外出をしているかなど、生活記録表を最低2週間付けてもらいましょう。これにより復職しても問題なく生活が送れるかの判断がしやすくなります。また復職後も生活リズムを3~6ヶ月確認しましょう。

体力が回復しているか

メンタルヘルスが回復しているか、体力が休職前の状態に戻っているかどうかも、従業員の復職させる条件のひとつです。従業員の体力が回復しているかを確認するために、主治医の診断書を参考にし、そのうえで従業員との面談に臨みましょう。

具体的には、起床時間が通勤に間に合うかや疲れが取れるよう睡眠量を確保できるか、起床時に疲れが残っていないかなど、2週間程度確認する必要があります。

通勤できるか

面談で通勤可能か確認しておらず、復職させてから通勤できないことが判明することが多く見受けられます。うつ病やパニック障害になると人混みが苦手になってしまうため、通勤することが困難になる場合もあるのです。

復職前に、同じ時間に起床し、同じルートで通勤するようシミュレーションすることで、通勤できるかを企業も従業員自身も確認できます。

職場に適応できるか

職場に適応できるかも重要な判断基準です。休職の原因が職場環境にある場合、特に注意が必要になります。

職場に適応するためには、従業員がストレスの原因となる担当業務から離れたり、十分な休息の確保や規則正しい生活を送るなど職場に適応できるように対処することや人事が職場環境に配慮することが重要です。

休職者自身が休職に陥った原因を自覚し、職場に復帰して適応できるかを判断してもらう必要があります。

企業として必要な配慮

休職者が復職する際には、企業は従業員に対し必要な配慮を行わなければいけません。

復職させるのは現職への復帰が原則ですが、企業には従業員に対して安全配慮義務があるため現職以外の職場に配転を検討することもありえます。

復職の流れや復職の際に企業が配慮すべき点について紹介します。

復職面談の設定

メンタルヘルス不調で休職していた従業員が復職する前に行うのが復職面談です。復職面談の目的のひとつが、休職者が職場で仕事をできるかの確認です。

面談には人事担当者のほかに産業医や直属の上司が参加します。産業医は健康管理の観点から、人事担当者は待遇に見合った労務を提供できるかという観点から復職を判断します。

そして、もうひとつの目的が、休職が再発しないようにすることです。復職面談で従業員自身が休職に至った原因を理解しセルフケアできるよう、復職面談の時間を就業時間に合わせるなど本格的に復職する前に試行的に勤務させ、休職者が円滑に復職できるようにしましょう。

主治医による診断書の提出

休職者が復職を希望していても、休職者自身の意思だけでは復職させられません。病気やケガを理由に休職し復職する際には、主治医の診断書を提出してもらう必要があります。先述したように十分な就業意欲だけでなく、休職に至った事由が消滅したことを確認するために、診断書は参考になるでしょう。

面談の際に確認すること

面談の際には、休職者の現在の体調や通院状況、服用中の薬の副作用やそれが業務や通勤の支障にならないか、休職者が復職に不安を感じていないかを確認しましょう。復職の不安を減らすため、業務内容や職場環境の変化、復職の進め方などについて面接の際に従業員に伝えておくといいでしょう。

休職者を復職させる際の注意

休職者を復職させる際に注意しないといけないことが何点かあります。

産業医の判断を仰ぐ

休職者を復職させる前に主治医から診断書を提出してもらいますが、診断書からわかるのはあくまで一般的に働けるかどうかなど病状の回復程度であり、診断書だけでは現職で働けるかどうかの判断はできません。そのため、主治医による仕事への復帰可能という診断は参考程度にし、復職面談などで産業医の判断を仰ぐか産業医の知見を有している医師による診断書を提出してもらいましょう。

就業規則の確認

休職や復職に関する就業規則の確認は重要です。従業員の復職は難しいと判断する場合には、休業期間が残っているかを確認し、休職期間が残っている場合には満了まで休職を認めることが可能です。

もし休職期間が残っていない場合には、就業規則の規定にもとづき従業員を退職あるいは解雇にします。ただし、休職期間が残っているにもかかわらず退職あるいは解雇を決断すると、従業員とのあいだでトラブルになり、最悪の場合不当解雇だと訴訟を起こされる場合があるので注意しましょう。

原則は治癒して現職復帰

休職者が復職する場合には、配転による新しい職場での仕事が負担にならないよう慣れ親しんだ現職の復帰が原則です。病気やケガがほとんど治っているが現職に復帰できないのであれば、従業員は治癒したとはいえず復職は認められません。

ただし復職判断については企業と従業員とのあいだで争いになりやすいので、主治医の診断書に疑問がある場合には産業医の受診を従業員に命じたり就業規則に復職後の業務について明示化しておくといいでしょう。

休職・復職の注意点を押さえておこう

休職や復職に関して法的な義務は存在せず、就業規則に則って判断していかないといけません。とくに復職判断ややむを得ない退職あるいは解雇の依頼は従業員とのトラブルになりかねません。

最悪の場合、従業員から不当解雇で訴訟を起こされる可能性があります。こうした問題にならないよう休職や復職についての注意点を抑えるだけでなく、就業規則に明示化することが重要となるでしょう。

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