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メンタルヘルス| 2021.06.30

「ストレスチェック徹底解説④」ストレスチェック集団分析の方法と見方を解説!職場改善の準備を整えよう

従業員50名以上の事業場に年に1度の実施が義務付けられるストレスチェック。 その結果を有効活用するには、集団分析の実施が欠かせません。 ストレスチェックの意義は実施そのものにはなく、高ストレス判定者のケアやメンタルヘルスを良好に保つための適切な職場改善にあります。 今回は、ストレスチェックに伴う集団分析に関して解説していきます。

目次

  • 【集団分析は「職業性ストレス簡易調査票」を用いて「仕事のストレス判定図」で評価するのが一般的
  • 基本的な集団分析評価方法「仕事のストレス判定図」をおさえる
  • 「仕事のストレス判定図」による分析手順と見方
  • 「職業性ストレス簡易調査票」以外のストレスチェック集団分析方法も検討の余地はあり
  • 集団分析は全従業員を受検させることで精度が上がる
  • 集団分析結果を適切に捉え最適な職場改善に向けて準備しましょう

【集団分析は「職業性ストレス簡易調査票」を用いて「仕事のストレス判定図」で評価するのが一般的

集団分析にはさまざまな手法がありますが、最もポピュラーなのは厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」を用いてストレスチェックを実施し、数値化した結果を「仕事のストレス判定図」に落とし込み分析するという流れです。

集団分析の概要やメリットについては、以下の記事も参考にしてみてください。
「ストレスチェック集団分析とは?意義や目的、企業のメリットを解説」

厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」とは

ストレスチェックで最も一般的な調査票は、厚生労働省推奨の職業性ストレス簡易調査票です。
3領域に渡って合計57個の設問があり、4段階の回答項目から選択していく形になります。
全設問の回答にかかる時間はおおよそ5~10分程度のため、受検により業務が滞るリスクは限りなく少ないでしょう。
実施手段は、紙の調査票を配布し記入してもらう方法と、Webページやイントラネットなどオンラインを活用する方法の2パターンです。
いずれにしても、個人情報が守られる形での実施が求められるため、自社の事情やセキュリティ面を考慮し、衛生委員会などで最適な手段を定める必要があります。

集団分析に使用する調査票は「職業性ストレス簡易調査票」以外でも可能

職業性ストレス簡易調査票は、厚生労働省の法令で使用が義務付けられているものではありません。
そのため、以下の3領域をすべて網羅する調査方法であれば、各企業で自由に選択可能です。

1. 仕事のストレス要因:職場における当該労働者の心理的な負担の原因に
関する項目
2. 心身のストレス反応:心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
3. 周囲のサポート:職場における他の労働者による当該労働者への支援に
関する項目

引用:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルhttps://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

集団分析の詳細な方法は、あらかじめ衛生委員会などで定めておく必要があります。

受検者の負担が少ない簡略版「職業性ストレス簡易調査票」も

職業性ストレス簡易調査票には、23個の設問で構成される簡略版もあります。
設問数が少ないため受検のハードルも低くなりますが、その分得られる情報も必要最小限です。
ストレスチェックは、集団分析結果を基にした職場改善の遂行に意義があるため、特別な事情がない限りは、設問が多い別の調査票を使用した方が良いでしょう。

より詳細に測定可能な「新職業性ストレス簡易調査票」も浸透している

ストレスチェックが法制化されてから、上記2種類の調査票が最もポピュラーなものでした。
しかし近年では、「新職業性ストレス簡易調査票」が浸透しつつあります。
新職業性ストレス簡易調査票は計80個の設問から構成され、事業場、部署、作業の各レベルの尺度が追加されています。
それにより、ハラスメントの測定も可能となりました。
令和2年6月にはパワハラ防止法が施行されたこともあり、ハラスメント対策を強化したい企業のニーズに適合しているものです。
また、従来の職業性ストレス簡易調査票は、ストレスが生じる要因にフォーカスした構成でしたが、新職業性ストレス簡易調査票では、職場の一体感やワークエンゲージメントを測れるようになりました。
そのため、ストレスはあるもののやりがいを持ち生き生きと働けているのか、反対に何らかのネガティブな要素を抱え精神的に疲弊した結果、高ストレス判定となっているのかという点が、見極めやすくなっています。

基本的な集団分析評価方法「仕事のストレス判定図」をおさえる

集団分析は、職業性ストレス簡易調査票で取得した数値を、仕事のストレス判定図に落とし込んだ上で行います。
仕事のストレス判定図では、2つの判断図が用いられ、以下4点のストレス要因に関しての測定が可能です。

■量-コントロール判断図
・仕事の量的負担
・仕事のコントロール

■職場の支援判断図
・上司の支援
・同僚の支援

職業性ストレス簡易調査票による集団分析では、以下2点に注意しましょう。

「職業性ストレス簡易調査票」から分析に活用されるのは12項目のみ

仕事のストレス判定図は、分析範囲が狭いデメリットがあります。
職業性ストレス簡易調査票には57個の設問がありますが、仕事のストレス判定図で活用するのは12項目のみです。
最も多く使用されている分析手法でありながら、調査内容をすべて網羅するには至りません。

10名未満での実施は個人の特定リスクに要注意

10名未満の集団分析は、個人の特定につながるリスクが高まります。
そのため、個人の特定に至らないよう、以下の対応を講じる必要があります。

・仕事のストレス判定図など、平均値を用いる分析方法で実施する
・複数の事業場、部署と併せて10名以上となる形で実施する
・10名未満で実施する場合は、対象となる全従業員に同意を得る

「仕事のストレス判定図」による分析手順と見方

仕事のストレス判定図を用いた集団分析は、対象集団の平均値と全国平均値を相対的に見て判断していきます。
分析手順は、以下の通りです。

1. 職業性ストレス簡易調査票でストレスチェックを実施
2. 仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司支援、同僚支援の回答を従業員ごとに得点化
3. 該当事業所、部署の平均値を算出
4. 仕事のストレス判定図に数値をプロット
 ・量-コントロール判断図:仕事の量的負担、仕事のコントロールが交わる箇所
 ・職場の支援判断図:上司支援、同僚支援が交わる箇所
5. プロット箇所と標準集団(全国平均)を比較し、自社の立ち位置を確認

仕事のストレス判定図へのプロットは、エクセルなどを使用し自社で行うことも可能ですが、厚生労働省が提供する「ストレスチェック実施プログラム」を活用するのがスムーズです。

厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム
https://stresscheck.mhlw.go.jp/

仕事のストレス判定図には色分けが施されており、色が濃い領域に近づくほど高ストレス状態であることがわかります。
また、ひし形でプロットされている標準集団(全国平均)との距離感を見ることで、自社のストレス要因の傾向を見定めることが可能です。

以下で、各判断図のポイントを解説します。

量-コントロール判断図【仕事の量的負担と仕事のコントロールを読みとる】

量-コントロール判断図は、横軸に「仕事の量的負担」、縦軸に「仕事のコントロール」を設けています。
仕事の量的負担は仕事量のウエイトを、仕事のコントロールはどの程度の裁量を持って業務を遂行できているかを測るものです。
これら2項目は、職業性ストレス簡易調査票にある、以下設問を基に算出した数値です。

■仕事の量的負担
A-1 非常にたくさんの仕事をしなければならない
A-2 時間内に仕事が処理しきれない
A-3 一生懸命働かなければならない

■仕事のコントロール
A-8 自分のペースで仕事ができる
A-9 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
A-10 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる

参照:職業性ストレス簡易調査票(57項目)
https://stresscheck.mhlw.go.jp/material.html

仕事の量的負担の値が高い場合、時間外労働や休日出勤によるストレスが懸念されるでしょう。
フィジカル面では脳や心臓疾患、メンタル面では睡眠障害やうつ病などを引き起こすリスクが高まります。
しかし、仕事の量的負担が低い=良好な職場環境であるかというと、必ずしもそうとは限りません。

ここで、裁量や自由度を測る仕事のコントロール値の適切な読み取りが重要となってきます。
たとえ仕事の量的負担が高数値でも、仕事のコントロール値が同様に高数値であれば、忙しいながらも自らの意思や裁量を発揮しながらやりがいを持ち働けているということなので、ストレスを感じにくくなるでしょう。

一方、仕事の量的負担の高数値に反して仕事のコントロールが低数値の場合は、自らの裁量で仕事が進められないストレスを抱えやすくなると想定できます。
集団分析では、状態と結果は必ずしもイコールとはならないことを認識し、相互関係を踏まえた判断が重要です。

職場の支援判断図【上司、同僚の支援を読みとる】

職場の支援判断図では、横軸に「上司の支援」、縦軸に「同僚の支援」設けています。
文字通り、上司や同僚からのサポートの程度を測るものです。
職業性ストレス簡易調査票の、以下設問から算出されています。

■上司の支援/同僚の支援
C-1/2 次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか?
C-4/5 あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?
C-7/8 あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?

参照:職業性ストレス簡易調査票(57項目)
https://stresscheck.mhlw.go.jp/material.html

上司の支援が高数値の場合は、上司がチームのバランスをうまく図り、チームビルディングが良好であることが見受けられます。
一方、低数値の場合は、上司のマネジメントが適切に発揮されておらず、何らかの不具合が生じていることが危惧されます。
状況に応じて、上司に対するフォローアップの機会を設けることを検討しましょう。

同僚の支援は、事業所、チーム内における人間関係や職場環境の雰囲気を投影します。
高数値の場合は、円滑な人間関係の元、お互いをサポートし合えている様子が伺えますが、低数値の場合は、人間関係にひずみが生じ、スムーズな連携が取れていない可能性が考えられます。
その場合、風土によるものなのか、特定の従業員同士の関係性が全体にネガティブな影響をおよぼしているのかなど、本質的な原因を探ることが重要です。

総合健康リスクを計算する

総合健康リスクとは、上記2つの判断図を踏まえ、「現状のストレス状態が、従業員の健康にどの程度影響を与えるか」を判断するための指標です。
100%を超過した分、従業員の健康リスクが高いことが示され、職場改善を要することとなります。
算出方法は以下の通りです。

(量-コントロール判断図の値)×(職場の支援判断図の値)/100

総合健康リスクを算出することで、各事業場、部署との比較が容易となります。

「職業性ストレス簡易調査票」以外のストレスチェック集団分析方法も検討の余地はあり

職業性ストレス簡易調査票を用いる集団分析方法は、推奨する厚生労働省が分析ツールを配布していたり、大多数の企業が使用していることによる信頼性が担保されていたりというメリットがあります。
しかしその一方で無視できないのは、仕事のストレス判定図に落とし込む際には網羅できる領域が狭く、すべてを生かしきれない点です。
それでもデメリットを超えるメリットがあれば問題ありませんが、そうでない場合は民間企業が提供するストレスチェックサービスの利用も検討しても良いかもしれません。
ストレスチェックの意義は、有効な手段分析の実施と、その後の職場改善にあります。
そのため、どのような形式のストレスチェックが自社に相応しいのか、幅広い視点で検討することをおすすめします。

集団分析は全従業員を受検させることで精度が上がる

集団分析は、対象事業所、部署に所属するすべての対象従業員に実施してこそ、実情に即した精度の高い集団分析結果が得られ、効果的な職場改善を推進できます。
そのため、集団分析の大前提として、ストレスチェックを漏れなく実施することが重要です。
ストレスチェック対象者は、以下に該当する従業員です。

1. 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者および1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
2. その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

引用:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

ストレスチェックの対象者は、一般健康診断と同様であると覚えておきましょう。

対象となるすべての従業員にストレスチェックを受検してもらうためには、日頃からメンタルヘルス対策の重要性やストレスチェックの意義を伝え理解を得る、継続的な取り組みが欠かせません。
ストレスチェック実施直前に、「義務だから」と押し付けるようなやり方では、従業員が企業側に不信感を覚える可能性もあります。
すべてに通ずることではありますが、付け焼き刃の対応では効果的な改革は行えないという認識を持ち、従業員側の立場に寄り添った対応を心がけましょう。

集団分析結果を適切に捉え最適な職場改善に向けて準備しましょう

ストレスチェック後の集団分析は、自社の高ストレス判定者の程度や、全体的な傾向を知るために非常に有効な手段です。
より精度の高い集団分析を実施するためにも、まずは衛生委員会などでストレスチェックの運用方法を明確に定めることから始めましょう。
そして、表面化された客観的数値を適切に分析し、社風や従業員の特性に合わせた職場改善の実践を目指しましょう。