コロナ禍のストレスチェックの重要性と57・80項目では不十分な理由

ストレスを抱えている女性

令和2年から続くコロナ禍は長期化し、いまだ出勤制限による在宅勤務を継続している企業もいらっしゃると思います。

しかし従業員のメンタルヘルス対策の重要性がより一層高まる中、従来と同様の概念では従業員のメンタルヘルス対策を十分に講じられないかもしれません。

そこで今回は、コロナ禍におけるストレスチェックの重要性と、ストレスチェックで用いられる調査票の違いなどについて解説します。

コロナ禍での在宅勤務で明らかになった企業課題

コロナ禍に突入したことで、日本の社会活動にも大きな変化が生じました。その中で多くの人に影響をおよぼしたもののひとつが、在宅勤務の推進による働き方の変化です。

在宅勤務の推進により今までと同じ形式での業務遂行が難しくなり、従業員のメンタルヘルスにネガティブな影響を与える新たな課題も生じました。

⽇本産業精神衛⽣研究会は、コロナ禍の在宅勤務による課題を以下のように提言しています。

・コミュニケーションの機会が減った
・同業他社との労働環境の違いに不満を感じる従業員が生まれた
・居住環境(住居、家族など)が在宅勤務に適さず、パフォーマンスに影響したりストレスを抱えたりする従業員が発生した
・在宅勤務による従業員のパフォーマンスや全体的な士気の低下
・経営層の方針と現場の動きにギャップや時差が生まれ混乱が生じた
・Web会議システムの参加人数に制限などにより、効率や意思疎通に不具合が生じた
・業務内容により在宅勤務の可否が異なり、不平等感が高まった

また、在宅勤務でかねてより存在していた課題が顕在化されたケースもあります。

・管理監督者のマネジメントスキルの程度が明らかになった
・部下の適切な評価が難しくなり、その状況に対し管理職が自己嫌悪などに陥った
・従業員が自身の評価に対し不満や不信感を持ち、チーム内の雰囲気にネガティブな影響をおよぼした
・案件管理が難儀となり、生産性が低下した
・メンタルヘルス不調者の復職支援システムの浸透が不十分であることが露呈された

上記はあくまでも一例であり、これらに加えてパーソナルな問題も生じていることが想像されます。

コロナ禍による在宅勤務が続く今こそストレスチェックが重要

上記のように課題が山積する中では、従業員のメンタルヘルス問題の取り組みとして二次予防の動きが活発になりがちかもしれません。

しかし、従業員のメンタルヘルスを守るために企業が最も注力したいのは、メンタルヘルス不調者を生み出さないための一次予防です。

一次予防の徹底には、適切なストレスチェックの実施が非常に重要となってきます。

昨年から続くコロナ禍はすでに長期化し、終息はいまだ見えていない状況です。

つまり、私たちが昨年のコロナ禍序盤で抱いていた「緊急時」「イレギュラー」という感覚を持ち続けることは、非常にリスキーだと言えます。

「今だけ乗り越えれば何とかなるだろう」と問題や課題解決を先送りし、従業員へ無理を強いることで企業活動を保とうとする状況から脱却しなければなりません。

ストレスチェックと集団分析の実施によりその手がかりを知り、適切な対処を早急に推し進めていく必要があります。

一人ひとり人間性も業務内容も異なる従業員たちのメンタルヘルス状態を図る共通指標として、ストレスチェックは欠かせない仕組みです。

ストレスチェックを適切に運用し、中長期視点で従業員のメンタルヘルス対策に取り組んでいきましょう。

ストレスチェックで用いられる調査票「57項目版」と「80項目版」の違い

ストレスチェックで使われる調査票
ストレスチェックで使われる調査票

ストレスチェックで使用する調査票は、厚生労働省が推奨する57項目版と、より項目が細分化された80項目版の2種類がポピュラーです。

両者の違いは質問数からも想像できるように、計れるストレス要因の領域の広さです。手早く実施できる57項目版、より多くの領域を網羅できる80項目版という形となります。

それぞれの特徴について、以下で解説します。

厚生労働省が推奨するストレスチェック57項目版「職業性ストレス簡易調査票」

ストレスチェック57項目版の「職業性ストレス簡易調査票」は、厚生労働省が定める「仕事のストレス要因」「心身のストレス要因」「周囲のサポート」の3領域を網羅し、質問数を最小限におさえた形です。そのため検査自体も5~10分程度、従業員の負担も少なく済みます。

ただ手軽に行えるメリットの一方、調査領域は最低限です。従業員の個人的なストレス要因を計るには十分でも、職場改善に生かす材料集めと考えると、少々不安も残ります。

厚生労働省が推奨する内容なので、メンタルヘルス対策に生かせる調査の実施は可能ですが、ストレスチェックをより有効活用したいという場合は、質問数を増やす方が良いでしょう。

ハラスメント対策に適応したストレスチェック80項目版「新職業性ストレス簡易調査票」

近年浸透し始めたのが、ストレスチェック80項目版の「新職業性ストレス簡易調査票」です。

ストレス要因の測定にフォーカスした57項目版とは異なり、80項目版は職場の一体感やエンゲージメントの測定が可能となりました。

ハラスメントや働きがい、上司のマネジメントに関して、事業場や部署、作業レベルの尺度が追加されているため、より広く深いストレスチェックの実施が実現します。

令和2年6月に施行されたパワハラ防止法遵守の観点からも、80項目のストレスチェックは、ハラスメント対策の方針を打ち出す有力な材料となることが期待されます。

コロナ禍の在宅勤務におけるメンタルヘルス対策には上記だけでは不十分

現状ストレスチェックでも用いられているのは、上記2種類が一般的です。

しかしこれらはあくまでも、従来の働き方にフィットした仕上がりになっています。

つまりコロナ禍における在宅勤務が続く現在においては、従業員のメンタルヘルス不調がコロナ禍によるものなのか、まったく別の要因なのか、適切に原因を見定められるとは言い難いのです。

さらにコロナ禍においてのストレス要因は、決して働き方が起因するものだけではありません。新型コロナウィルスそのものに対する不安や恐怖、ライフスタイルの変化なども大きく影響します。

コロナ禍の働き方の変化や、それに伴うライフスタイルの変化を考慮した内容に最適化しなければ、ストレスチェックの有効性は不十分となってしまいます。

コロナ禍のストレスチェックで有効なストレスチェック項目とは

ストレスチェックの質問内容は、法的に定められているものではありません。ストレスチェック実施者が自由にカスタマイズ可能です。

そのためコロナ禍におけるストレスチェックでは、新型コロナウィルス自体に対するストレスや、それに伴う環境の変化がもたらすストレスの両方を計れる質問を盛り込むことが効果的です。

従来のストレスチェックの質問とコロナ禍にかかわる質問を融合させることで、従業員のストレス要因をよりピンポイントに突き止められるようになるでしょう。

以下の記事では具体的な質問例を挙げているので、ぜひご覧ください。
【コロナ禍のストレスチェック】見直すべき理由とメンタル対策に生かす質問例

時代にフィットしたストレスチェックでなければ意味を成さないと心得る

ストレスチェックは仕事や仕事環境を起因とするストレス要因を顕在化し、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています。そのため、その時代背景を反映させた構成や手法を用いなければ、ストレスチェック本来の目的を達成できません。

今この状況下の従業員に何が不足していて、何が必要なのか見極められるストレスチェックができないのであれば、割いた金銭的、人的なリソースに対する効果も薄くなってしまいます。

コロナ禍のニューノーマルな働き方として在宅勤務が定着した今、情勢の変化とともに従業員の悩みやストレスの要因も刻々と移り変わっています。

法的な定めや良き手法は踏襲しつつも、時代背景や自社の状況、環境を考慮したストレスチェックを構成することが非常に重要なことであると理解しましょう。

コロナ禍のストレスチェックで自社に最適なメンタルヘルス対策を

ストレスチェックの実施は、従業員のメンタルヘルス状態を把握する重要なツールです。コロナ禍の現在では、その重要性はより高まっているでしょう。

そのため、「義務化されているから、ひとまず形式的にこなす」というスタンスは望ましくありません。いかに自社のメンタルヘルス対策の遂行につなげられる内容を実施できるか、思案を巡らせることを怠らないようにしましょう。