企業リスクの重要課題「高ストレス者」に対する正しい対応を知ろう

労働者の心の健康保持を実現するためのメンタルヘルス対策は、生産性の向上や、リスクヘッジにもつながります。 メンタルヘルス対策は社員の健康管理において重要な課題とされていますが、企業価値向上のためにも重要な役割を担っているのです。特に高ストレス者への対応は生産性の向上、訴訟などの企業リスク両面で重要な課題です。 本記事では、高ストレス者への企業としての対応について解説していきます。

そもそも高ストレス者とは?

労働安全衛生法の改正により、労働者を50人以上抱える事業所では、「ストレスチェック」の検査を全労働者に対して実施することが義務づけられました。

高ストレス者の認定方法の詳細に関しては後述しますが、ストレスチェックで心身のストレスについて自覚症状があるか、あるいは心身のストレスについて自覚症状がなくてもストレスの原因や周囲からのサポートの状況が非常に悪いと判定された受検者が高ストレス者として認定されます。

ストレスチェックの結果は受検者にも通知され、高ストレス者として認定された受検者が医師による面談を受けることを希望した場合には、事業所は面談を実施しなければなりません。

また面談の結果や医師の判断にもとづき事業所は、労働時間の短縮や時間外労働の制限などの措置を取る必要があります。

ストレスチェックとは何か?

ストレスチェックの目的は、労働者が自らのストレスの状態を知ることです。ストレスが高ければストレスをためないようにしたり、面談を受けることで医師から適切な助言を受けたり、面談の結果を事業所の職場環境の改善につなげたりすることで、うつなどのメンタルヘルス不調を予防します。

判断される基準は?

ストレスチェックでは「 仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「 周囲のサポート」の3領域が必ず含むようにと規定されています。高ストレス者として認定されるのは以下の2つのどちらかの基準を満たした場合です。

①「心身のストレス反応」の評価点の合計が高い者
②「心身のストレス反応」の評価点の合計が一定以上であり「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」の項目の評価点の合計が著しく高い者

厚生労働省の『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』によると、高ストレス者に該当する者の割合は基本的に全体の10%程度と定められています。

②に該当する者が高ストレス者だと認定される理由は、①だけを高ストレス者だと認定すると、自覚症状として顕著な症状は現れていないがメンタル不調のリスクがある者を見逃す危険性があるためです。

高ストレス者を放置するとどうなる?

高ストレス者をそのまま放置しておくと、メンタルヘルス不調へと陥るリスクが高いと考えられます。

メンタルヘルス不調の労働者の占める割合が高くなると、企業の生産性が低下します。メンタルヘルス不調は脳の機能低下につながるためです。またメンタルヘルス不調で脳の機能が低下するとイライラし物事への関心が薄れるなど、意欲低下の症状があらわれ、結果として仕事へのモチベーションも低下するでしょう。

さらに注意力や決断力の低下により、取り返しのつかないミスやトラブルにもつながるリスクも高くなります。業務で事故を起こして人的被害を与えたり、取引先に損害を与えたりすると最終的な責任は企業が負わねばなりません。

また、メンタルヘルス不調の原因が業務上の理由であれば、労働者が企業に対し労災の請求や損害賠償請求など民事訴訟を起こす可能性もあり、問題化した企業は社会的なダメージを負うことになりかねません。

高ストレス者に対する正しい対処

では、企業は高ストレス者に対してどのように対処すればいいのでしょうか。

高ストレス者に対して面談を行う

企業は高ストレス者に対して面談を行う必要があります。ただし、ストレスチェックの受検者が高ストレス者と認定されても面談を希望しなければ、面談は行われません。

労働安全衛生法にもあるように面談を実施するのは医師ですが、企業が抱える職場の環境に詳しい産業医が面談を行うのが望ましいと「ストレスチェック制度実施マニュアル」に記載されています。

面談を行う流れについて

高ストレス者と認定された受検者が面談を希望した場合には、企業は医師による面談をセッティングし、高ストレス者と認定された受検者が申し出てから1ヶ月以内に行われる必要があります。

通常、就業時間中に面談が行われ、労働者が面談を受けやすいように複数日時の設定が推奨されています。

医師は面談の際に、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」といったストレスチェックの3項目に加えて、

1.被面談者の労働時間や業務内容
2.被面談者のストレスの要因になっている職場の人間関係や、前回の検査以降に3.業務に変化があったか
3.抗うつ症状があるか
4.過去の健診結果や現在の生活状況

を確認します。

確認が終わると、ストレスを未然に防ぐような対処技術の保健指導や専門機関の受診を促すなど医学上の指導が被面談者に対して行われます。

面談終了後には、企業は実施年月日や被面談者や医師の氏名が記載された面談の記録を医師から受け取り、5年間保存する義務があります。

面談を避ける高ストレス者について

先述したように、ストレスチェックで高ストレス者と認定されたからといって、受検者は医師の面談を受ける義務を負っていません。仮に受検者が面談を拒否したとしても、労働安全衛生法や厚生労働省の定めるガイドラインの規定は絶対的な強制力をもちません。

面談を避ける理由とは?

ある調査では、全体の5.8%が家族や友人に相談しています。また自分で病院やカウンセリングにいった人も15.5%いるなど、必ずしも職場で指定された専門家等の面談を受けているとは限りません。なぜ高ストレス者と認定された労働者は面談を避けるのでしょうか。

 

高ストレス者である自覚がない

たとえば、「不定愁訴」と呼ばれる、頭が重い、イライラする、疲労感が取れない、よく眠れない等の自覚症状が強い人は、原因が不明だったとしても面談を受ける傾向にあります。それに対して、不定愁訴が強くない人は高ストレス者であるという自覚がない可能性があります。

 

時間がなかった

時間がないという理由で、面談を受けないと回答したケースも挙げられます。産業医の面談の多くは、健康診断と同様に業務時間内に実施されます。

しかし、後述するように上司に自分が高ストレス者だと知られたくないという理由から、多くの受検者は業務時間外に産業医の面談を希望します。

ところが、産業医の都合で18時以降は勤務しないというケースも多く、結果として産業医の面談を受ける時間を準備できません。

 

自分が高ストレス者だと知られたくない

高ストレス者だと認識していても、職場や上司、同僚に知られたくないという理由で何も行わない人もいます。ストレスチェックはプライバシー保護の観点から個々の結果がわからない仕組みになっています。

しかし面談を申し出た時点で、職場に高ストレス者であることが伝わります。高ストレス者の多くは、面談後に職場環境を改善してもらうよりも、高ストレス者だと知られることで失職や左遷、仕事を割り当ててもらえないという不安を強くもつ傾向になるといいます。

 

面談で何も変わらないと諦めてしまう

面談後に医師は周囲が業務をサポートしたり職場環境の改善を事業者に促したりします。しかし事業者が高ストレス者に対して適切な就業上の措置を取らなければ、面談の意味はありません。こうした状況を見越した受検者は面談で何も変わらないと諦めてしまうケースもあります。

面談に行かない高ストレス者への対応

高ストレス者だと認定された労働者は、その後の面談を受けなくても、法的な罰則はありません。またストレスチェックや面談を拒否したことを理由に企業が懲戒処分を行うなどして、ストレスチェックや面談を強要することもできません。

しかし、高ストレス者だと認定された受検者が面談を拒否したという理由で放置していると、企業は安全配慮義務違反にみなされる可能性があります。

ここからは面談に行かない高ストレス者への対応について紹介します。

 

面談の要請や社外のカウンセリングを勧める

明確な規定はありませんが、企業は安全配慮義務を果たすよう最善の努力が必要です。事業の管理者や労働者、産業医から構成される衛生委員会の場でストレスチェックや面談について調査や審議をしっかり行い、衛生委員会での決定事項にもとづきストレスチェックの受検や面談を該当者に勧めましょう、必要な場合には、社外のメンタルヘルスが専門の医師のカウンセリングを勧めることも可能です。

面談後の業務フローを改善する

高ストレス者と認定された労働者に対して、どういうサポートを受けられるかを具体的に示しましょう。労働者が相談しやすい環境づくりも大切です。企業も医師から就業上の措置や労働安全管理体制の見直しが必要である旨の報告を受けたならば、速やかに実行に移す必要があります。

職場環境を改善するには人事労務管理にも関与するので、各担当者との連携が必要でしょう。

 

 

社員が安心して働ける職場づくりで確固とした会社づくりを

ストレスチェックで高ストレス者がいるかどうかを確認し、面談指導を行うことは、該当者にとってもメンタルヘルスの改善につながるだけでなく、こうした高ストレス者を生まない企業づくりに役立ちます。

企業がメンタルヘルス対策に取り組むことは、労働者にとってプラスになるだけでなく、企業が成長・拡大するためにも重要です。労働者にとって居心地のいい職場づくりで、人材の定着と組織改善につなげましょう。