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健康診断| 2021.06.24

入社前に必要な健康診断とは?定期健康診断との違いなどを解説

労働安全衛生法で規定された法定健康診断を従業員に受診させることは、事業者の義務です。こうした法定健康診断のうち、就職や転職時に実施されるのが雇入時健康診断です。 入社前に実施される健康診断は毎年1回行われる定期健康診断と違いはあるのでしょうか。本記事では、入社前の健康診断について解説していきます。

目次

  • 入社前健康診断とは?
  • 入社前健康診断の仕組み
  • 入社前健康診断の注意点
  • 入社前健康診断の未受診を防ぐには
  • 入社時の健康診断結果を企業に活かそう

入社前健康診断とは?

先述したように、入社前の健康診断は法定健康診断のひとつです。就職や転職時に必要とされるのが入社前に従業員が受診する健康診断で、雇入時の健康診断と呼ばれます。

従業員の採用が決まると、事業者は従業員の入社前に健康診断を受診させるか、従業員が雇入時健康診断に相当する健康診断を個別で受診し、その結果を事業者に提出しないといけません。

入社前健康診断の法的根拠は、労働安全衛生法に規定されています。労働安全衛生法第66条第1項には、事業者は労働者に対し健康診断を行う義務があると定められています。

また、労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省令の「労働安全衛生規則」の第43条によると、常時使用する労働者の雇入時に対して健康診断を行わないといけません。

入社前健康診断の仕組み

入社前の健康診断はどのような仕組みになっているのでしょうか。

入社前健康診断の対象

先述したように、入社前健康診断の対象者は常時使用する労働者だと規定されています。常時使用する労働者は、平成19年(2008年)の行政通達で次のように規定されています。

次のいずれかに該当する者
(1)期間の定めのない契約により使用されている
(2)1年以上使用される予定がある
(3)更新により1年以上使用されている
所定労働時間数が通常の労働者の4分の3以上である

つまり、正社員でなく、パートやアルバイトでもこの条件を満たしている場合には、雇入時に健康診断を行わないといけません。

同行政通達では、雇入時の健康診断を従業員に行う努力義務も次のように規定されています。

所定労働時間数が通常の労働者の2分の1以上である

必須とされる検査項目

労働安全衛生規則の第43条に、雇入時の健康診断で行うべき項目が規定されています。同規則によると、以下の11の項目すべてを行う必要があるとされています。

1. 過去の病気や手術、治療についてなど既往歴と健康に影響を及ぼす職歴があったかなど業務歴の調査
2. 自覚症状や他覚症状があるかどうか
3. 身長、体重、腹囲、視力、聴力(1,000Hzの低音域で30dB以下、4,000Hzの高音域で30dB以下の聴力)の検査
4. 胸部エックス線検査
5. 血圧の測定
6.血色素量や赤血球数など貧血の検査
7. AST(GOT)、ALT(GPT)(※1)、y-GTPなど肝機能検査(※2)
8. LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)など血中糖質検査
9. 血糖検査
10. 尿中に糖や蛋白があるかなど尿検査
11. 心電図検査
※1 AST(GOT)、ALT(GPT)は肝細胞、y-GTPは胆管で生成される酵素で、いずれも肝臓でのアミノ酸の代謝にかかわる働きをしている
※2 y-GTPはタンパク質を分解する酵素

これらの項目は省令で定められていますが、ドライバーを要する企業のようにこのほかにも業務上検査する必要がある項目を指定するケースもあるでしょう。従業員が個別に健康診断を受診する際など、漏れがないよう伝えておきましょう。

採用選考時の健康診断との違い

雇入時の健康診断を含めた定期健康診断の目的は、常時使用する労働者に対して健康状態を把握し、労働時間の短縮や作業転換等の事後措置を行い、脳疾患や心臓疾患、生活習慣病などを防止することです。

雇入時の健康診断で異常があった場合には医師または保健師による保健指導を実施するよう努める義務があると、労働安全衛生法第66条の7に規定されています。

また、従業員が健康保持のために必要な措置を医師から意見聴取することが事業者に義務付けられると労働安全衛生法第66条の4に規定されています。労働安全衛生法第66条の5に基づき、安全衛生委員会などで審議・検討したうえで、措置が実施されます。

つまり、雇入時の健康診断は採用選考時の健康診断ではありません。採用選考時に健康診断を実施しているケースがあるかもしれませんが、ウイルス性肝炎や色覚異常など応募者の適性と能力を判断するうえで必要のない事項を把握する可能性があり、結果として就職差別と判断されかねません。

そのため、応募者の適性と能力を判断するうえで合理的かつ客観的に必要である場合を除いて実施しないようにしましょう。

定期健康診断との違い

定期健康診断と雇入時の健康診断との違いは、先述した「胸部エックス線検査」の取り扱いです。雇入時の健康診断では胸部エックス線検査のみ規定されていますが、定期健康診断では喀痰(かくたん)検査が追加されています。

もう1つの違いが、雇入時の健康診断ではすべての検査項目の実施が必須であるのに対し、定期健康診断では検査項目の一部が省略可能なことです。具体的には、身長や腹囲、胸部エックス線検査、喀痰検査、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査は医師の判断により省略可能あることが、厚生労働省の告示により規定されています。

これらの省略項目は、個々の労働者の健康状態を勘案しながら医師が判断することが重要です。

検査結果が届くまでにかかる時間

雇入時の健康診断の実施時期は、雇入の直前あるいは直後であることが多く見受けられます。従業員が個別で健康診断を受診することは可能ですが、先述した検査項目11個をすべて網羅する必要があります。また前職の会社で期限内に受診したものであれば代用可能です。

ただし、定期健康診断と雇入時の健康診断の検査項目は異なるので注意が必要です。抜けている項目があった場合には、再度雇入時の健康診断を受診させる必要があるでしょう。

入社前健康診断の注意点

入社前健康診断で注意したい点について触れていきましょう。

費用は誰が負担する?

先述したように、入社前の健康診断は労働安全衛生規則第43条に規定されていますが、事業者の義務なのかあるいは従業員の義務なのか費用負担については規定されていません。

ただし事業者に健康診断を実施する義務を法律で規定している以上、事業者が負担すべきものであるという通達を当時の労働省が昭和47年(1972年)に都道府県労働基準局に向けて出しています。そのため、企業が雇入時健康診断の費用を負担するのが一般的です。

入社前健康診断は義務?

入社前の健康診断を含め定期健康診断は事業者側の義務です。企業が従業員に対して健康診断を受診させない場合には50万円以下の罰金に課せられることが、労働安全衛生法第120条に規定されています。

一方、労働安全衛生法では従業員が雇入時に健康診断を受診することを拒否しても罰則は規定されていません。しかし労働安全衛生法第66条で企業が健康診断を受診させる義務が規定されている以上、従業員が健康診断を拒否した場合には懲戒処分の対象とすることができます。

結果によって採用の可否を決めても良い?

原則として、雇入時の健康診断の結果で採用の可否を決められないことは、先述した通りです。ただしバスやタクシー、トラックのドライバーのように健康上のチェックが欠かせない職種の場合にはその限りではありません。

これは、てんかんや睡眠時無呼吸症候群などを従業員が発症していた場合、それに起因して重大な事故につながりかねないためです。第三者を巻き込んだ事故が起きると、企業は法的な責任が問われますので注意しましょう。

入社前健康診断の未受診を防ぐには

従業員が雇入時健康診断の受診を拒否した場合は、どうすればいいのでしょうか。先述したドライバーを使用する企業のように、事業者は法定の健康診断以外にも業務の種類や必要に応じて健康診断の受診をさせることがあります。

従業員がプライバシーの問題から健康診断の受診を拒否したとしても、労働者に健康障害が生じた場合には企業は安全配慮義務違反で損害賠償請求されても過失相殺の対象になることや、労災事故が起きる可能性があるため、健康診断を受けてもらうよう従業員に説明しましょう。

また健康診断を受けやすくするよう、業務を調整したり、日程を調整したりすることも必要でしょう。受診しなかった場合には就業規則に懲戒処分を設けることで、健康診断の受診の必要性を従業員に意識づけることが可能です。

いずれにせよ、どのような事柄が懲戒の対象になるかを明文化し社内に周知させておかないと、懲戒処分を従業員にくだすことはできないでしょう。

入社時の健康診断結果を企業に活かそう

入社前の健康診断を従業員に受診させるのは企業の義務です。法定健康診断の目的は従業員の健康管理です。健康診断の結果をもとに従業員が健康点安全に働けるよう適切に人員配置を行い、離職率の改善や生産性の向上につなげていくとよいでしょう。