産業医の捺印、署名が不要に! 健診やストレスチェックの労基署報告が簡略化

人事・労務領域の業務は多岐に渡りますが、なかでも健康診断関連は、担当者の手を大きく煩わせる業務のひとつと言っても過言ではありません。 社内対応のみならず、実施先のクリニックとの調整や、産業医との連携も発生し、煩雑になりがちです。 しかし令和2年8月より、各書類に必須となっていた産業医および医師による捺印が廃止となりました。 これにより、健康診断における労基署報告業務の簡略化が実現しています。

【前提】企業には労基署報告義務による届け出提出や健康診断結果の保管などが課されている

企業は、労働安全衛生法およびじん肺法により、年に1度の定期健康診断や、従業員50人以上の事業場へのストレスチェック実施などが義務付けられています。
上記に伴い、健康診断結果の作成と保管、加えて従業員50人以上の事業場においては、定期健康診断結果報告書を作成し、労基署へ届け出る義務も果たさなければなりません。
本記事は企業がこれらを遵守するにあたり、産業医および医師に依頼していた捺印や電子署名に対する法令改正を解説しています。

産業医の捺印や電子署名が廃止!人事担当者内で処理が完結

令和2年8月28日、改正労働安全衛生法およびじん肺法が施行となりました。
改正で実行されたのは、定期健康診断結果報告書並びに健康診断個人票への産業医および医師の捺印や電子署名の廃止です。
これにより、産業医および医師から捺印や電子署名を取得する手間や時間をかけることなく、企業の人事担当者のみで各種処理が完結する仕組みが整いました。

産業医の捺印や電子署名が廃止となった背景と目的

従来では、従業員50人以上の事業場に届け出義務がある定期健康診断結果報告書には産業医へ、健康診断並びにストレスチェック結果が明記された個人票には医師および歯科医師へ、捺印を依頼する必要がありました。
それが近年では各方面で電子化が顕著となり、定期健康診断結果報告書の電子申請や、健康診断個人票の電磁的記録の活用による保存を厚生労働省が推進し始めました。
これにより、捺印に代わって電子署名が活用され始めたところです。
しかし電子署名の使用には、あらかじめ認証局への申請が必須であることから、各所での積極的な導入が阻まれていました。
そこで現状を改善し、よりスムーズな普及を試みようと施行したのが、本件の労働安全衛生関係法令の改正に伴う、産業医および医師の捺印や電子署名の廃止です。

すべての健康診断において産業医の捺印や電子署名が不要!しかし氏名の記入は必須

今回の法令改正の対象となるのは、スタンダードな定期健康診断並びにストレスチェックだけでなく、じん肺健康診断や特定化学物質健康診断などを含めたすべての健康診断です。
ただし注意すべきは、捺印や電子署名が不要でも、氏名の記載自体は省略できない点です。
自社を担当する産業医および健康診断の実施者である医師が誰なのかという記録は残さなければなりません。
無記載の定期健康診断結果報告書並びに健康診断個人票は、正式なものであると厚生労働省に認められないため注意しましょう。

産業医の捺印や電子署名の廃止で受けられるメリット

先述の通り、産業医および医師の氏名を省略することはできません。
しかし今回の法令改正により、健康診断結果報告書の産業医氏名や、健康診断個人票の医師の診断や意見欄に関して、人事担当者による代筆が認められました。
そのため担当者は、オンラインなどで産業医および医師からヒアリングを実施した後、自らの手で記載することが可能です。
書類やデータのやり取りがなくなり人事担当者内で作業が完結するため、作業効率も向上し、スピーディーな処理が期待できます。

健康診断並びにストレスチェックの実施義務は変わらず

健康診断個人票並びに定期健康診断結果報告書の様式変更や提出にかかるフローについては、上記の通り変更となります。
ただし今回の法令改正に関しては、健康診断並びにストレスチェックの実施自体に影響が及ぶものではありません。
実施対象や条件に変化はありませんので、自社に必要な対応を確実に行っていきましょう。

新様式の利用は厚生労働省HPまたは入力支援サービスから

今回の捺印や電子署名の廃止により変更となった、健康診断個人票並びに定期健康診断結果報告書の様式は、厚生労働省HPから個別に様式のダウンロードが可能です。
または、厚生労働省が運営する入力支援サービスのWebサイトを利用すると、オンライン上で帳票作成が可能です。
Webサイト上にはデータ保存機能もあるため、次回以降の申請で共通箇所の入力の手間が省けます。
なお、現在は移行期間として、旧様式による申請も認められています。

改正前に実施した健康診断も産業医の捺印や電子署名は不要

産業医および医師による捺印や電子署名の廃止は令和2年8月28日より適用されていますが、それ以前に実施した健康診断などに関しても、産業医および医師の捺印や電子署名は不要です。
上記の通り、所定の方法で新様式を使用し申請する形で問題ありません。
また電子申請の場合は、「e-Gov」のサイトから手続きが可能です。

電子化の流れにうまく乗り健康診断業務の工数削減を目指しましょう

近年のオンライン化の推進や、新型コロナウイルス流行などの後押しもあり、あらゆる領域で従来までの慣習的な法令や業務に対して、てこ入れが行われています。
今回の産業医および医師の捺印や電子署名の廃止によって、人事担当者の負担は軽減されるでしょう。
さらにこの機会に、健康診断個人票の電磁的記録並びに定期健康診断結果報告書の電子申請を本格的に導入することで、業務フローの簡略化だけでなく、ペーパーレス化によるコスト削減効果も期待できます。
電子化の流れに乗り、健康診断業務を効率良く進めていきましょう。