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安全配慮義務| 2021.04.23

病気で欠勤を繰り返す従業員に診断書の提出は求められる?就業規則の記載がポイント

風邪などの急病で休むのは仕方ないことですが、たびたび欠勤を繰り返されると会社の業務に支障が出ます。それだけでなく、他の社員にも影響を与えてしまうでしょう。 会社には従業員の健康状態を把握する義務があり、重大な病気の場合は休職の手続きをするなど、何らかの措置をとらなければなりません。欠勤が仮病ではないのか、重大な病気の可能性がないかを確かめるためには、診断書の提出を求めたいケースもあるでしょう。 しかし、そもそも、会社は欠勤する従業員に診断書の提出を求めることができるのでしょうか? 本記事では、従業員に診断書の提出を求めることの可否や、求める場合の注意点などについて紹介します。

目次

  • 従業員に診断書の提出義務はある?
  • 就業規則に記載する際のポイント
  • 診断書の提出を求める際の注意点
  • まとめ

従業員に診断書の提出義務はある?

従業員に診断書の提出を求められるかという点については、労働基準法に特別な規定がありません。診断書はデリケートな個人情報を含み、病名を知られたくないと思う従業員もいるため提出を求めるには慎重な対応が必要です。

診断書とは何かについて確認した上で提出を義務化するための方法や従業員から拒否された場合の対応について確認していきましょう。

診断書とは

まず診断書の意味について、確認しておきましょう。診断書とは、医師が作成する公的な書類です。患者の症状について記載している書類で、診察した医師だけが作成できます。特に決まった書式はなく、医療機関ごとにさまざまです。

診断書が必要になるのは主に、障害や疾患を理由に休職する場合、あるいは業務環境を変更する場合があげられます。

風邪など急病で数日休んだ程度では診断書を求めることはありませんが、欠勤が繰り返されるなどの事情がある場合、状況を確認するために診断書の提出を求める必要があるでしょう。

提出を義務化するには就業規則への記載が必要

診断書の提出は基本的に任意であり、提出を拒む場合は強制することができません。提出を義務化したい場合には、就業規則への記載が必要です。就業規則に記載があれば労働契約の内容になり、会社は業務命令として診断書の提出を求めることができます。

就業規則は会社のルールブックのようなもので、常時使用する労働者が10人以上の会社は必ず作成しなければなりません。それだけではなく、従業員が見やすい場所に掲示するなど、周知してあることが必要です。作成してあっても、従業員がその存在を知らなければ規則の効力はありません。

提出義務について規則に記載がない場合、内容を変更することも可能です。変更の際は労働者の過半数を代表する者の意見書も作成しなければならず、労働基準監督署への届出が必要です。変更した就業規則は、従業員に周知することが必要です。

就業規則に記載がない場合は?

診断書の提出義務が就業規則に記載されていない場合、提出は任意です。強制はできず、提出が必要なことを説明して納得してもらわなければなりません。その際も、客観的に提出が妥当だと認められる場合に限られるでしょう。風邪で数日休む程度であれば、一般的に診断書の提出が必要とまではいえません。

たびたび病欠を繰り返して仮病が疑われる、あるいは健康に重大な問題があることが考えられる場合には、事情を説明して診断書を提出するよう求めましょう。

従業員から拒否された場合

診断書の提出を拒否された場合、就業規則に記載があるかどうかで対応が変わります。就業規則に記載がない場合、会社はそれ以上診断書の提出を求めることはできません。健康に問題があるようなら、休職して治療に専念するよう説得するのも対応の一つです。

重大な病気でない場合には、頻繁に休まないよう指導することも必要になるでしょう。欠勤により業務に支障が出ること、他の社員に迷惑をかけることをよく説明する必要があります。

就業規則に記載がある場合、会社は業務命令として診断書の提出を求めることが可能です。規則に記載されているケースに該当するかを確認して提出を求めましょう。提出に応じない場合の懲戒事由が規則に記載されている場合は、その内容に沿って懲戒処分することもできます。

提出拒否で解雇が認められた裁判例がある

診断書の提出を拒否した従業員の解雇が争われた事案で、解雇を認めた裁判例があります( 大建工業事件 平成15年4月16日 大阪地裁で判決)。休職期間満了後に診断書の提出を求めたという経緯で、提出を拒否されたため会社は従業員を解雇しました。解雇を認めた裁判所の見解は、次のようなものです。

・会社が就労できるかどうかの判断に医師の診断を要求することは、信義や公平の観点から合理的かつ相当であり、従業員もこれに応じる義務がある
・特に理由を説明することなく診断書を提出せず、医師への意見聴取も拒否し続けている場合、解雇の合理的理由がある

休職から復帰後に、従業員が就労できるかどうかを診断書で判断することは合理的な理由があり、それを拒否する場合には従業員の側に正当な理由が必要であると判示したのです。この事例では拒否する従業員に正当事由がなく、解雇が認められました。

就業規則に記載する際のポイント

従業員に診断書の提出を義務付けるためには、就業規則に記載がなければなりません。記載する際は、次のような点に留意しましょう。

提出を求めるケースを具体的に定義する

提出を求めるケースは具体的に記載します。単に「欠勤したとき」ではなく、「欠勤が〇日以上続いた場合」など、具体的な数字を示しましょう。

厚生労働省のモデル就業規則では、

「傷病のため継続して〇日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。」

というサンプルを提示しています。

日数を明記していない場合、極端な話では1日でも診断書の提出を命じられることにもなるでしょう。しかし、風邪などで1〜2日休むことはよくあることで、そのたびに診断書を請求されるのは従業員に大きな負担を与えてしまいます。

(参考:厚生労働省「モデル就業規則」)

欠勤日数は何日にするべきか

欠勤日数を何日にするかの判断は会社に委ねられていますが、内容に社会的妥当性がない場合はトラブルの原因にもなります。

会社は従業員の健康状態を把握しておく義務があり、診断書を求めるような特別な病気かどうかを見極める日数としては、7日程度が妥当でしょう。仮病による欠勤防止を重視する場合などは、3日程度の短い日数にするケースもあります。

ただし、「〇日以上」とした場合、1〜2日の欠勤をたびたび繰り返す場合に対応できない可能性もあるでしょう。そのような場合を想定する場合は「それ以下の日数でもたびたび繰り返す場合は同様とする。」などの記載を追加するという方法もあります。

使用目的や取扱いも定めること

診断書は重要な個人情報であり、個人情報保護法で守られている権利です。特に健康情報の取り扱いには注意しなければなりません。個人情報保護法2条では、職場で不当な差別や偏見などが起こらないように配慮すべき情報を「要配慮個人情報」として特に保護されることを定めています。

厚生労働省の指針では健康に関する情報をこの要配慮個人情報とし、個人情報よりも慎重な取り扱いをするべきとしています。 診断書も要配慮個人情報であり、就業規則にはその使用目的や取扱いについてしっかり定めなければなりません。

(参考:平成30年 厚生労働省 指針)

提出しない場合の対策も盛り込む

診断書の提出をしない場合の対策も記載しておかなければなりません。正当な理由がない場合は提出を拒むことはできない」旨を記載し、具体的な懲戒事由を定めます。制裁の内容は行為に対して妥当なものであることが必要です。あとでトラブルにならないよう具体的に記載し、適用する場合も厳格な運用が行われなければなりません。

実際に提出を求める場合の正当事由

規則を運用する際は、正当事由があるかどうかの確認も必要です。就業規則に記載があるからといって、記載の内容に該当すれば当然に提出を求められるわけではありません。明らかに風邪などの急病で数日の休養で治癒するとわかっている場合に、規則に該当するからと診断書の提出を求めるのは、権利の濫用になる可能性もあります。

あくまでも就業規則の趣旨に合い、診断書を求める必要がある場合に提出を請求できると考えた方がよいでしょう。

診断書の提出を求める際の注意点

診断書の提出を求める場合には、次の点にも注意が必要です。

診断書の費用負担は?

診断書の発行には費用がかかります。金額は施設によって異なり、1通2,000~3,000円が相場です。内容によっては6,000円以上になる場合もあります。従業員にとっては大きな金額になり、会社とどちらが負担するかが問題になるでしょう。

費用負担について特に決まりはありません。休職中の従業員が会社に復職する場合に提出する場合であれば、従業員が完全な労務的提供できる健康状態であることを裏付けるために提出するものなので、その費用は従業員が負担すべきものとされています。

欠勤が多い場合に会社が請求する場合、会社負担ともいえそうですが、会社の判断に委ねられています。

柔軟な対応も視野に入れる

診断書の提出については、トラブルを防ぐために柔軟な対応も要求されるでしょう。仮病か否かが知りたいだけの場合、処方箋の控えや病院の診察券など、診断書に代わるもので対応するのも一つの方法です。従業員の負担を考え、診断書の費用は会社の負担にするのもよいでしょう。

解雇を検討する場合は手順を踏む

提出拒否により就業が困難と判断した場合、解雇に踏み切ることがあるかもしれません。解雇は従業員にとって一番重い制裁であり、トラブルにならないためにもその手続きは慎重に行いましょう。直ちに解雇するのではなく、提出したくない事情を聞き取る、提出するよう説得をするなどの対応をする必要があります。

このような話し合いの場を設けても指示に従わないようであれば、就業規則の内容に従い、解雇に至るのもやむを得ないともいえるでしょう。

まとめ

欠勤を繰り返す従業員に対し診断書を求められるのは、就業規則に記載がある場合です。記載がない場合は、納得してもらうよう説得しなければなりません。就業規則に記載がある場合でも、提出を求める正当性は必要です。拒否された場合、提出を求める趣旨を説明して話し合うようにしましょう。