メンタルヘルス不調者の早期発見ポイントと対策方法

体調不良の女性

「職場のメンタルヘルス不調はどうしたらすぐ発見できる?」
「メンタルヘルス不調者とはどのように向き合えばいい?」
メンタルヘルス不調は周囲が気付きにくく、早期発見が難しいという特徴があります。従業員の心身の健康を維持するためにも、早期発見のポイントや対策方法を知りたいという人事担当者は多いでしょう。
今回の記事では、メンタルヘルス不調者の早期発見のポイントと対策方法を解説します。メンタル不調のプロセスや対策方法を理解しておけば、従業員が心身ともに健康な状態で就労できる職場環境を整えられるでしょう。

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メンタルヘルス不調者増加の原因と早期発見の必要性

コロナ禍では、感染のリスクや失業・収入減少、外出禁止やテレワークによる人との接触機会の減少など、ストレスの要因になる出来事が増えたと考えられます。コロナ禍以降、このような原因からメンタルヘルス不調による休職者や退職者が発生した企業は増加傾向にあります。
厚生労働省が発表した令和3年の「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、令和2年から令和3年の過去1年間でメンタルヘルス不調によって連続1ヶ月以上休業または退職した従業員がいた企業の割合は10%を超えました。中でも従業員が500人を超える企業では、80%を超える結果が出ています。
従業員が50人以上の企業では90%以上がメンタルヘルス対策に取り組んでいるものの、依然として続くコロナ禍における厳しい状況を打開できていません。
メンタルヘルス不調は重症になる前に早期発見ができれば、休職や退職を防ぐことが可能です。不調者本人や企業にとっても負担を最小限に減らせるため、早期発見・早期対応が非常に重要といえます。

参考:厚生労働省 令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」

メンタル不調が起こるプロセスと予防の3段階

メンタル不調はどのように起こるのか、NIOSHの職業性ストレスモデルを参考にしながらプロセスを確認していきましょう。

NIOSHの職業性ストレスモデル

引用:東京都労働相談情報センター

職場のストレス要因によってストレス反応を起こすと、健康状態が悪化して心身の障害につながります。ストレス反応は、職場だけでなく個人的要因、仕事以外の要因、緩衝要因によって修飾される点は押さえておきましょう。特に緩衝要因である上司や同僚、家族らのサポートの有無はストレス反応の軽減に影響します。

予防の3段階

職場のメンタルヘルス対策は、1次予防(未然防止)、2次予防(早期発見と適切な対応)、3次予防(職場復帰支援)の3段階があります。
1次予防は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐためにストレスを発生させない職場環境を作る取り組みです。具体的な取り組みとしては教育研修や従業員自身によるセルフケア、過重労働や長時間労働の是正、快適な職場環境の整備などが挙げられます。
2次予防は、メンタルヘルス不調が重症化しないよう、早期発見し対処していく取り組みです。具体的な取り組みとしては本人、上司や同僚による気付き、健康診断、ストレスチェック、産業医による相談対応などが挙げられます。不調者本人が気軽に相談しやすい環境を整え、産業医や主治医と連携を取りながら重症化しないように対応することが重要です。
3次予防は、重症化してしまった不調者の職場復帰支援を行う取り組みです。具体的な取り組みとしては職場復帰支援プログラムの策定や実施、不調者本人への適度な接触、主治医との連携が挙げられます。復帰のタイミングを間違えると病状の再発や悪化を引き起こし、再び休職してしまうケースがあります。焦って職場復帰をしないように不調者本人にはしっかり療養してもらい、復帰の決定には主治医や産業医の判断を仰ぐことが大切です。

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メンタルヘルス不調者の早期発見のポイント

メンタルヘルス不調者を早期発見するためのコツは、「KAPE」です。

K:勤怠=欠勤、突発休み、遅刻、早退など勤怠の乱れ
A:安全=職場で安全な勤務ができているか
P:パフォーマンス=パフォーマンスが低下していないか
E:影響=周囲への悪影響を及ぼしていないか

上記の点に着目し、いつもと違う様子がないか見逃さないことが重要です。異変があった場合、メンタルヘルス不調に陥っている可能性が高いため、早期に産業医への相談や本人への理由の確認を行うようにしましょう。

 職場でみられるストレスサイン

職場でみられるストレスサインをしっかり押さえておけば、メンタルヘルス不調者の早期発見が可能となります。実際にどのようなサインがあるのか、具体的に見ていきましょう。

本人が気づく予兆

・よく眠れない
・食欲がない、食事が美味しく感じない
・疲れやすく体の調子がなんとなく悪い
・気力がなく何をするにもめんどくさいと感じる
・ネガティブなことばかり考えてしまう
・好きなことや趣味を楽しいと感じなくなった
・明日を迎えるのが怖く、生きていく自信がない
・他人の存在や視線、音がいつも以上に気になる

周りが気付く予兆

・遅刻や早退、欠勤が多くなった
・物忘れやミスが多くなった
・ぼーっとすることが増えた
・落ち着きがなくなった
・感情の起伏が激しい
・無表情または表情が暗くなった
・ケガが多くなった
・業務を怠りがちになる
・報告や会話の回数が減る、あるいは多すぎる
・身だしなみが乱れてきた

また、テレワークの場合は下記にも着目しましょう。

・チャットやメールの返信速度が遅くなった
・Webミーティングで発言しなくなった
・Web会議の画面をオフにすることが増える
・理由もなく残業時間が増える
・髪や服装の乱れ
・雑談(チャットやミーティング中)などに参加しなくなる

メンタルヘルス不調の対策方法

メンタルヘルス不調者の早期発見には、ストレスサインを見逃さないだけでなく、重症化させないための対策も必要です。最後に、効果的なメンタルヘルス不調の対策方法について見ていきましょう。

前提となる4つのメンタルヘルスケア

厚生労働省はメンタルヘルスケアの実施において、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」からなる「4つのケア」を推進しています。
セルフケアでは、管理監督者も含めた全従業員が自分自身の心の健康状態を理解することが重要です。そのため、企業は教育研修や情報提供を行うなどしてセルフケアをサポートしましょう。
ラインケアとは、職場の管理監督者にあたる上長が日常的に部下の健康状態を把握してケアすることです。従業員のメンタルヘルス不調の早期サインにいち早く気付き、早期対応することが求められます。
事業場内産業保健スタッフ等によるケアは、セルフケアやラインケアが円滑に実施されるように企業内の産業保健スタッフが支援することです。産業保健スタッフは職場を巡回し、気付いたことがあれば管理監督者と共有して職場改善の手助けをします。
事業場外資源によるケアは、企業以外の専門機関や専門家と連携して行うケアです。従業員が職場内でのケアを希望しない場合や、専門機関からのサポートを受けたい場合に有効です。
適切なメンタルヘルスケアを行うためには、この4つのケアを使い分けながら実施することが大切です。

参考:厚生労働省「職場における心の健康づくり」

【対策方法①】研修や相談窓口の設置

メンタルヘルスケアを行う際は、企業全体が理解を深めて関心を持つことが重要です。企業が教育研修や情報提供を行うことで、従業員はメンタルヘルスケアへの理解と関心が高まり、セルフケアを行いやすくなります。
また、相談窓口を設置することで従業員も安心して相談できるようになります。セルフケアの取り組みが徹底されれば、メンタルヘルス不調者の早期発見がしやすくなるでしょう。

【対策方法②】職場環境の改善によるストレス軽減

働く環境が原因でストレスを抱えてしまう従業員は少なくありません。コロナ禍でテレワークが普及したことにより、対人ストレスを受ける機会は少なくなったでしょう。一方でテレワークでは仕事が進まず、孤独感を抱えてしまい、ストレスを感じる場合もあります。
特にテレワークは従業員の健康状態を確認しにくいため、細やかなラインケアが必要となります。定期的な面談等を通して従業員の健康状態を確認すると共に、従業員それぞれに合った働き方ができるように出社とテレワークを選択制にするといった柔軟な環境改善が求められます。

【対策方法③】従業員の体調管理と就業管理の徹底

従業員の体調管理を徹底・維持するためには、従業員個人だけでなく会社も一丸となって考えることが大切です。従業員が健康的に働ける環境を用意し、配慮を心掛けるようにしましょう。
また、同時に就業管理を徹底することもメンタルヘルスケアにおいて重要なポイントといえます。従業員の労働時間を把握して無理をさせないようにフォローすることは、ストレスの軽減および健康リスクの管理につながります。従業員が心身ともに健康な状態で働けるよう、企業は従業員の体調管理と就業管理を徹底しましょう。

不調者の早期発見には継続的なチェックとフォローが重要

不調者の早期発見には、セルフケアやラインケアをはじめさまざまな取り組みが必要です。その中でも、ストレスチェックや健康診断の結果から心身の不調を定量的・継続的に把握して変化に気付くことが非常に重要といえます。

日々の継続的な健康状態の確認は、健康管理システム「WELSA」を活用するとスムーズに実施できます。従業員の健康状態の可視化、健康リスク・疾病リスクの分析・予測など、さまざまな機能が役に立つでしょう。不調者の早期発見や早期対策を迅速かつ適切に行えるため、ぜひ導入を検討してみてください。

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