過重労働の定義・基準とは?成功事例から学ぶ対策のポイントを紹介

膨大なタスクを抱える社員

長時間労働が問題視されている現代社会において、対策を徹底して従業員の健康状態を守ることは企業の努めです。特に長時間労働・過重労働が慢性的に発生している企業では、早急に是正措置を取らなければなりません。
この記事では「過重労働」の定義や対策方法、他社の成功事例などを解説します。自社課題への対策を実施して、従業員の健康状態を維持できるよう快適な職場環境を整備しましょう。

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過重労働の定義とは

過重労働とは、時間外や休日におよぶ長時間労働・不規則な勤務・頻繁な出張などが原因で、従業員の心身に大きな負担がかかる働き方のことです。過重労働は脳卒中や心筋梗塞などの身体的な疾患や、うつ病をはじめとした精神疾患を招くリスクがあります。また、過重労働による病死や自殺は「過労死」と呼ばれ、過労死を防ぐためにも早急に過重労働を是正しなければなりません。
令和元年の調査によると、日本では18.3%の従業員が週49時間以上労働しており、韓国に次いで2番目に過重労働が発生しているというデータが出ています。

引用:(厚生労働省「令和2年版過労死等防止対策白書」諸外国における「週労働時間が49時間以上の者」の割合(令和元年))

このようなデータからも分かるように、日本人は過重労働の傾向があり、企業としては過重労働を未然に防ぐための働き方改革に取り組むことが重要です。

法改正により変更された過重労働の基準と罰則

働き方改革推進を目的に、2019年4月1日に改正労働基準法が施行されました。法改正によって大きく変わったのは、残業時間の上限が罰則付きで定められたことです。
法改正前は、「月45時間/年360時間以内」の残業時間の上限があったものの、違反しても行政指導があるのみで、法律で残業時間の上限が定められているわけではありませんでした。また、通称「36(サブロク)協定」と呼ばれる「労働基準法36条 時間外労働についての労使協定」を特別条項付きで結べば、臨時的に法定労働時間を超えて労働を行うことが認められていました。
法改正後は、残業時間の上限が「月45時間/年360時間以内」と法律で定められています。臨時的に特別な事情があった場合でも「年720時間以内」「休日労働を含む2~6ヶ月平均80時間以内」「休日労働を含む月100時間未満」「月45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで」といった時間外労働に関する制限があり、これらを超えることはできません。
違反した場合は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられるリスクがあります。

過重労働がもたらすリスクと影響

過重労働は身体や精神に大きな負荷がかかります。どのようなリスクや影響があるのかを見ていきましょう。

自殺・過労死

過重労働は身体に大きな負荷がかかり、疲労が蓄積しやすくなります。その結果、脳血管疾患や心臓疾患を発症して最悪死に至ることもあります。また、過労・ストレスが原因で精神疾患を発症し、自殺に発展するケースも少なくありません。

身体疾患

過重労働は、さまざまな健康障害を引き起こすリスクをもたらします。心筋梗塞や脳卒中、胃十二指腸、腰痛、月経障害、過敏性大腸炎といった身体疾患を発症する場合があります。

精神疾患

身体疾患だけでなく、精神疾患を発症するリスクもあります。不規則な勤務や業務のプレッシャーが原因で精神的に負担が増加し、うつ病や不眠、不安障害といった心の不調が生じやすくなります。

生産性の低下

過重労働はメンタルヘルス不調を引き起こす原因となります。メンタルヘルス不調に陥ると、やる気や集中力が低下するとともに、重症化すると休職・退職につながるおそれがあります。そのため、労働不足による生産性の低下や会社の業績悪化といったリスクを招きかねません。

訴訟リスク

過重労働が原因で、過労死あるいは自殺によって従業員が死亡、または身体疾患・精神疾患を引き起こしてしまった場合、遺族らの訴訟による多額の損害賠償責任を問われるリスクがあります。また、企業のブランドイメージも低下し、人材採用にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。

過重労働が発生する原因

ここでは、適切な過重労働対策を実施するうえで把握しておくべき、過重労働の原因について解説します。

人手不足による業務過多

営利活動を行う企業としては、できるだけ経費を削減して利益を追求したいと考えるのが普通です。経費で必要最低限にとどめられやすいのが人件費であり、必要以上に採用を行わない企業も少なくないでしょう。その結果、人手不足を招くと同時に従業員への負担と業務量が増えて業務過多となり、過重労働が発生してしまうのです。

長時間労働が美徳とされる風潮

高度経済成長期には「長時間働くことが美徳」とされる風潮がありました。現在では働き方改革の推進によって長時間労働に対する意識の変化が見られるようになりましたが、未だにその風潮が残っている企業も少なくありません。そのため、「周囲が残業しているから帰りづらい」「残業する社員のほうが評価されやすいから残る」といった理由で長時間労働が発生してしまうケースがあるのです。

過重労働を防止するための対策方針

従業員を守り、さまざまなリスクを回避するためにも、過重労働の傾向がある企業は早急な対応が必要です。ここでは、過重労働を防止するための対策について解説していきます。

労働時間の把握

自社における過重労働の実態を認識するためには、従業員の労働時間把握が最初の一歩となります。労働基準法で定められた労働時間の基準に比べて、自社の労働時間がどれくらいなのかを把握しましょう。残業時間をどの程度減らさなくてはいけないのかを正しく知る必要があります。労働時間を正しく把握するため、勤怠管理システムを導入し効率的に管理できるようにしましょう。

業務量の見直しと業務効率化

従業員一人あたりの業務量を確認して、業務量の調整や見直しをはかることが大切です。業務量と人材数のバランスが取れていないこともあれば、業務効率が低下しているために労働時間が増えているケースもあるでしょう。
そのため、人員の増減や人材の再配置、業務の削減や標準化をはかるとともに、改善が期待できるシステム導入などによって業務効率化に取り組むことが対策のポイントといえます。

衛生委員会・安全委員会の活用

労働安全衛生法によって、50人以上の従業員がいる企業では一定の基準に該当する場合に衛生委員会と安全委員会の設置が義務付けられています。委員会設置の目的は、従業員の危険・健康障害防止のために対策することであり、毎月1回以上開催しなければなりません。委員会を活用することで、過重労働における現場の課題の早期発見および対策の方向性を探ることが可能となります。

参考:(厚生労働省「安全衛生委員会を設置しましょう」)

医師による面接指導制度

労働基準法の改正により、時間外・休日労働時間が月80時間を超えていて疲労の蓄積が認められる従業員が面接の申し出を行った場合、医師による面接指導の実施が義務付けられました。企業は面接指導の結果について医師に意見聴取を行い、職場の配置転換や作業転換、労働時間短縮などの適切な措置を実施しなければなりません。

会社全体での意識改革と評価制度の見直し

自社において長時間労働を美徳とする風潮が残っているようであれば、会社全体で意識改革を行う必要があります。過重労働防止の共通認識を持ちつつ、評価制度の見直しや業務効率性におけるインセンティブの導入といった対策を行うと良いでしょう。規定の就業時間内に仕事を終わらせることが評価につながるという意識を定着させることが、残業時間削減のポイントです。

各企業における残業時間削減の対策事例

最後に、各企業における残業時間削減の対策事例を紹介します。他社の成功事例を参考に、取り組みのポイントを押さえていきましょう。

残業の事前申請と実施状況の管理

【企業Aの例】
企業Aでは、残業を行う場合に都度「自己申告票」を使って事前申請し、管理職に提出しています。従業員の労働時間の集計結果を社長に報告するため、上層部も実態を把握可能です。時間外労働が目立つ部署には社長・管理職から是正勧告を行い、残業時間削減に向けてトップダウンで対応しています。また、時間外労働は管理職の評価と報奨制度にも影響する仕組みなので、できるだけ時間外労働をしないよう効率的に業務に取り組む意識が根付いています。

【企業Bの例】
企業Bでは、残業を行う場合に都度「時間外労働申請書」を管理職に提出しています。この申請書をもとに管理職は残業内容を確認しつつ残業の必要性の有無を判断して、不要と判断すれば業務を翌日に回すよう従業員に指示します。この取り組みにより不要な残業の削減、どの部署でどういった理由・程度の残業が発生しているかの把握が可能となりました。

ノー残業デーの設定

【企業Cの例】
企業Cでは、多忙な日をあえてノー残業デーに設定するという取り組みを行っています。月曜日が他の曜日に比べて多忙になる傾向があり、残業も多かったので、あえて多忙な月曜日をノー残業デーに設定しました。この結果、「効率よく業務を行う」という意識で働く従業員が増え、月曜日だけでなく普段の残業も少なくなりました。

【企業Dの例】
企業Dでは、従業員が各自でノー残業デーを設定しています。理由としては、従業員ごとに業務内容や進捗状況が異なるため、一律で設定することが難しいからです。この結果、以前は「みんながいると帰りにくい」という雰囲気があったため不要に残業をする従業員もいましたが、ノー残業デーの設定によって周囲を気にすることなく帰りやすい雰囲気ができあがり、定時退社の推進が可能になりました。

業務の平準化

【企業Eの例】
企業Eでは、特定の従業員への業務集中による長時間労働を防止するために、担当業務をローテーションして各従業員が幅広く業務に携われる体制を整えています。その結果、特定の従業員に集中していた業務を他の従業員がサポートできるようになり、業務量の平準化につながりました。

参考:(厚生労働省「時間外労働削減の好事例集」)」

過重労働の抑制には従業員の健康管理を把握する仕組みが重要

過重労働の抑制、およびリスク回避に向けた取り組みは決して容易ではありません。また、複数の事業場を抱えている企業の場合、本社側で就労実態を正確に把握することは困難です。そこで、過重労働の課題解決に役立つのが健康管理システムです。
健康管理システム「WELSA」は、ストレスチェックや健康診断のデータ一元化による課題発見やリスク分析が可能で、従業員の健康状態を効率的に管理できるようになります。高リスク者の抽出により過重労働の解消に向けた取り組みが行いやすくなるため、ぜひ「WELSA」の活用を検討してみてください。

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