ストレスチェックの実施者・実施事務従事者とは?要件と役割を解説

2015年12月に労働安全衛生法の改正が施行され、常時使用する従業員が50人以上いる企業には年1回のストレスチェックの実施が義務付けられました。ストレスチェックの実施にあたり、特に重要なのが実施者と実施事務従事者の存在です。

今回は、ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の要件や役割について解説します。実施体制の全体像をしっかり理解して、効率的なストレスチェックの実施に役立てましょう。

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ストレスチェックの実施体制

ストレスチェックの実施体制は、以下の4つの役割で構成されています。

  1. 事業者
  2. 実務担当者
  3. 実施者
  4. 実施事務従事者

事業者

事業者とは、ストレスチェック制度の実施責任者を指します。事業者の役割として、ストレスチェックの導入における制度全体の進行管理、医師による面接指導後の対応など、各方針の決定を行います。法人企業で実施する場合には法人企業、個人企業で実施する場合は事業主個人が事業者に該当します。

実務担当者

実務担当者は、ストレスチェックの実施計画の策定、実施の管理、産業医や保健師などと連携・調整を行う役割を担います。実務担当者の選任には、人事労務担当者、衛生管理者、メンタルヘルス推進担当者、定期健康診断担当部署などが望ましいでしょう。

実施者

実施者は、ストレスチェックの実施にあたって中心的な役割を担います。医師、保健師または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師もしくは衛生保健福祉士の中から選任しなければなりません。実施者は個人情報である従業員の健康情報を扱うため、守秘義務があります。

実施事務従事者

実施事務従事者は、実施者の補助を行う役割を担っており、実施者の指示を受けて調査票の回収やデータ入力、記録の保存などを行います。特別な資格は必要ないため、社内の衛生管理者、産業保健スタッフ、事務職員、外部委託先などが指名されることが一般的です。実施事務従事者も守秘義務があるので個人情報の取扱いには注意が必要です。

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の要件

ストレスチェックの業務は、「実施の事務」と「その他の事務」の2つに分類できます。これらの違いは、従業員の健康情報=個人情報を扱うかどうかです。人事に関して直接権限を持っている人は、個人情報を扱う「実施の事務」には従事できません。

実施者と実施事務従事者は「実施の事務」に従事するため、社長や専務、人事部長といった人事権を持っている人は実施者・実施事務従事者にはなれない決まりとなっています。人事課の職員やその他の部署の職員など、人事権を持たない人は実施者・実施事務従事者になることが可能です。なお、個人情報を扱わない業務については、人事権を持つ人も従事できます。

個人情報を扱わない業務の例として、以下のようなものが挙げられます。

・ストレスチェックの実施計画の策定
・ストレスチェックを実施する日時や場所などに関する実施者との連絡調整
・ストレスチェックの実施を外部委託する場合の外部機関との契約などに関する連絡調整
・ストレスチェック実施の日時や場所などに関する従業員への通知
・調査票の配布
・ストレスチェック未受検者への受検勧奨

では、人事権を持つ人が従事できない「実施の事務」にはどのような業務があるのでしょうか。実施者と実施事務従事者が従事する業務については、次の章で詳しく解説していきます。

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者の役割

ストレスチェックの実施において、個人情報を扱う業務には実施者と実施事務従事者が従事します。実施者と実施事務従事者それぞれの役割を見ていきましょう。

実施者の役割

ストレスチェックの実施者は、労働安全衛生法によって以下のように定められています。

一 医師
二 保健師
三 検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師

引用:(e-GoV 法令検索「労働安全衛生規則」)

50人以上の従業員がいる企業では産業医の選任が義務付けられています。ストレスチェック実施の際には、産業医に実施者を担ってもらうのが理想的でしょう。ストレスチェックにおける実施者の役割は以下の通りです。

  1. 専門的なアドバイス

事業者がストレスチェックの調査票の項目・内容を選定する際に、専門的な立場からアドバイスや内容の確認を行います。

  1. 評価方法や高ストレス者の選定基準の確認

ストレスチェックによって高ストレス者を選定する基準や評価方法を決める際に、専門的な立場からアドバイスや内容の確認を行います。企業によって労働環境や職場の人間関係・業務内容は異なるため、実施者は高ストレス判断の基準や評価方法について専門的なアドバイスをするのみにとどまり、選定基準の最終決定は事業者が行います。

  1. 面接指導の選定

ストレスチェックの結果を集計・分析して、高ストレス者の中から面接指導が必要な従業員の選定を行います。面接指導が必要と判断された従業員が面接指導の申し出をしなかった場合は、必要に応じてその他の相談機関の紹介・支援を行うとよいでしょう。

実施事務従事者の役割

ストレスチェックの実施事務従事者は、労働安全衛生法によって以下のように定められています。

検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

引用:(e-GoV 法令検索「労働安全衛生規則」)

実施事務従事者の選任人数は、ストレスチェック実施対象となる従業員の規模によって変わる場合もありますが、一般的には1~2人を配置する企業が多い傾向にあります。実施事務従事者は、実施者の指示に従って以下のような業務を行います。

  1. ストレスチェックの調査票の配布
  2. 調査票の回収・確認・データ入力
  3. 個人および集団の評価結果の出力
  4. 個人への結果通知
  5. 事業所へ集団分析結果の提供
  6. 面接指導が必要と判断された従業員への面接の勧奨
  7. ストレスチェック未受検者への受検勧奨
  8. ストレスチェック結果の記録作成・保存

ストレスチェック実施の流れ

ストレスチェックは実施して終わりというわけではなく、メンタルヘルス不調を未然防止するためにも、高ストレス者のフォローアップや集団分析結果を踏まえた職場環境改善を行うことが重要です。また、ストレスチェックを適切に実施するには、実施体制をしっかり構築して各々の役割を果たす必要があります。

最後に、ストレスチェックにおける担当ごとの役割を再確認してみましょう。

「実施の事務」に従事する実施者と実施事務従事者は、個人情報の扱いに気を付けなければなりません。そのうえで、ストレスチェックは煩雑で手間がかかる業務が多く、未受検者への勧奨や調査票の回収作業など、特に実施事務従事者の役割において負担のかかる部分が目立ちます。ストレスチェックを効率的に実施するためには、煩雑な業務をシステム化することが望ましいでしょう。

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