似ているが要注意!「休業」と「休職」の意味の違いについて知ろう
「休業」と「休職」という2つの言葉の違いについて、考えた方はそう多くないと思いますが、人事の目から見ると、実は意味が大きく違ってきます。 今回は、この2つの言葉の意味と使われ方の違いを、「産休」「育休」といった用語も交えて解説していきます。
「休業」と「休職」の違いは?
まずは「休業」と「休職」の意味をそれぞれ確認し、両者の違いについて紹介します。
「休業」の言葉の意味とは?
「休業」とは、会社との労働契約を継続したまま業務を行わないことです。労働者には働く意思があるものの、何らかの事情により働くことができない状況になります。
労働契約は続いているため、健康保険や厚生年金保険などの社会保険は支払わなければなりません。
休業理由は会社の都合、労働者の都合の2通りが考えられ、会社都合の場合は賃金の支払い義務が生じる場合もあります。それぞれみていきましょう。
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会社の都合による場合
会社の都合による休業とは災害や業績不振など、会社側が労働の場を提供できない場合です。
会社の都合による休業の場合、労働基準法により会社は平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払わなければなりません。
ただし、自然災害など不可抗力の理由で休業する場合には会社に支払い義務はなく、賃金の支払いは免除されます。
労働者の都合による場合
労働者側の都合によって休業する場合、就業規則などに定めがない限り原則として給料の支払い義務はありません。給与の支給がない場合でも労災保険や雇用保険、健康保険から手当金や給付金の受給ができる場合があるため、申請の案内をするとよいでしょう。
給与の支払義務はなくても社会保険は継続します。ただし、出産や育児を理由とする休業の場合、申し出ることで会社負担分を含め社会保険料が免除されるという制度があります。その際は、労働者から「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を取得して手続きを行いましょう。
「休職」の言葉の意味とは?
「休職」とは、労働者が業務に従事するにあたり不適当な事由が生じた場合に、労働契約関係を維持しながら業務への従事を停止させることです。休職の事由として、業務外の事故や病気による長期欠勤、刑事訴追された場合、他社への出向期間中などがあげられます。
休職について特に法律の定めはないものの、会社で休職の制度を設ける場合は就業規則や労働協約などで定めなければなりません。休職事由や期間、休職期間中の取り扱い、復職復帰後のことなどを明記します。労働契約を結ぶ際は、労働者に「休職に関する事項」を明示することが必要です。
二つの言葉の大きな違いは?
「休業」と「休職」の一つに「会社側の賃金の支払い義務の有無」があげられます。会社都合による休業の場合はこの義務が発生しますが、休職の場合は発生しません。
また、休業の場合は産前産後休業や育児休業、介護休業など、法令の要件を満たしたときに労働者側に請求権が生じる場合があります。
これに対し、休職は就業規則など基づき、会社からの命令、もしくは労働者の自己都合による申し出により行われるものです。
産休・育休について知ろう
産休や育休は法律に定めのある「休業」です。ここでは、産休や育休について紹介します。
産休・育休は休業にあたる
産休や育休は正式名称を「産前産後休業」「育児休業」といい、名称に「休業」と付いている通り、どちらも「休業」にあたります。それぞれ労働基準法65条、育児・介護休業法5条以下に定められている制度です。
産前産後休業
産休はお産をするすべての労働者に与えられている権利であり、出産の準備期間である産前6週間の休業と産後の回復期間である8週間以内を合わせた制度です。
産前休業は任意で取得でき、休業を希望する場合は出産予定日の6週間前から自由に開始日を選択できます。また、多胎の場合は産前14週間からの休業が可能です。
一方、産後休業は「就業させてはならない」と定められており、使用者の義務として労働者の請求を待たずに休業を与えなければなりません。
ただし、産後6週間を経過した時点で医師が認めた場合は、労働者の判断で職場に復帰することもできます。
育児休業
育休は、産後休業が終わった翌日から子どもが満1歳になる誕生日の前日まで、会社に申し出ることにより休暇を取得できる制度です。男女ともに取得する権利があります。育休を開始したい労働者からは、予定日の1ヶ月前までに申請を受け付けましょう。
誰でも育休を取得できるわけではなく、1年以上雇用されていて、子どもが1歳の誕生日を迎える以降も引き続き雇用されることが見込まれるなどの要件があります。
育休の期間は原則として1年です。ただし、保育所に入所できないなど1年で職場復帰が難しい場合、最大で2年までの延長が認められています。
産休・育休中は賃金を支給する?
産休・育休中は社会保険の支払いが免除されますが、基本的に賃金の支払いは行いません。それをカバーするため、加入している健康保険から出産手当金として賃金の3分の2相当額が支給されます。出産にかかる費用も出産育児一時金で補填が可能です。
また、雇用保険に加入している場合、育児休業給付金が67%の割合で支給されます。ただし、育児休業開始から6ヶ月経過したあとは50%相当額に減額されるため、休業する労働者に伝えておいた方がいいかもしれません。
〜番外編〜介護休業中の賃金は?
産休・育休と並び、法律で認められている休業に介護休業(育児・介護休業法11条以下)があります。要介護状態にある家族を介護するための休業です。
休業の取得には入社1年以上などの要件があり、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。休業開始予定日の2週間前までに書面などで申し出があれば手続きを行いましょう。
介護休業中も、基本的に賃金は支給しません。休業中は雇用保険の雇用継続給付の一種である「介護休業給付金」として、休職前の給料の67%が支給されます。
休業・休職と休暇・欠勤との違いについて確認
「休業」「休職」と意味が似ているものに「休暇」と「欠勤」があります。これらの意味や使われる状況についても確認しておきましょう。
「休暇」の意味とは?
「休暇」とは、労働者が労働する義務がある日に、会社がその義務を免除することです。休暇には法律上一定の要件を満たす場合に必ず付与しなければならない「法定休暇」と、就業規則などに基づいて任意に付与する「特別休暇」があります。
法定休暇の代表的なものは年次有給休暇です。取得の要件が労働基準法で定められています。「特別休暇」は会社が独自に労働者への優遇措置として与えるもので、慶弔休暇や夏季・冬季休暇などがあげられます。
「欠勤」の意味とは?
「欠勤」は労働の義務があるにも関わらず、労働者が業務に従事しない場合に使われます。有給休暇と異なり、賃金は支払われません。労働者に欠勤する権利はなく、欠勤は労働契約違反になります。懲戒処分の対象になるケースもあります。
休業と休職は正しく使い分けましょう
「休業」と「休職」の違いについて紹介してきました。労務管理の現場では、休業と休職はまったく別のものです。休業の中では、産休や育休を扱う会社が多いでしょう。出向などが多い会社では、休職の手続きをする場面が多いかもしれません。「休業」と「休職」の違いをよく理解し、業務で正しく使い分けましょう。