【令和4年4月施行】育児・介護休業法改正内容をわかりやすく解説
令和4年4月1日より、改正育児・介護休業法が順次施行されます。
現在の育休制度は万能とは言い難く将来を案じているビジネスパーソンも多い中、今回の改正は「仕事と子育てをうまく両立したい」と願う子育て世代にとって朗報となるでしょう。
そこで今回は、育児・介護休業法の改正内容についてポイントを簡潔に解説していきます。
来年の施行までまだ時間はありますが、あらかじめ全体像をつかみ、企業として必要な対応を検討していきましょう。
目次
令和4年4月より順次改正育児・介護休業法が施行!従業員の育休取得を後押し
育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)とは、自ら(配偶者)に生まれた子供の育児や家族の介護が必要な従業員に対し、仕事と家庭の両立を支援するものです。
その育児・介護休業法が令和3年6月に改正され、令和4年4月1日より順次施行されます。
今回の改正は育休に焦点を当てたものになっており、働く子育て世代にとって明るい兆しとなる内容です。
産休~育休が十分に取得できない現状を打開する育児・介護休業法改正
厚生労働省の調査によると、令和2年度における育児休業取得率は、女性81.6%、男性12.65%です。
女性は平成20年度に90.6%を記録した後下落傾向ですが、男性は令和元年度の7.48%から大幅な上昇を見せています。
傾向としては評価できるものですが、数値自体は決して安心できるものとは言えません。
この現状にメスを入れるのが、今回の育児・介護休業法改正です。
産休や育休で一時的に従業員が離脱することは、企業にとって痛手となることは間違いありません。
しかし働き方が多様化した現代においては、企業は労働環境の最適化に努め続けなければ、優秀な人材をみすみす手放すことになります。
そのため企業は、政府の法整備の流れを受け入れ柔軟に対応していくことが必須です。
次項から育児・介護休業法改正内容について、施行日順に解説していきます。
育児・介護休業法の改正ポイント【令和4年4月1日施行】
令和4年4月1日からの育児・介護休業法改正内容は、以下の2点です。
育児休業の取得を推進する職場環境の整備を義務化
従業員が育児休業を取得しやすい職場環境の整備が、企業側に義務づけられます。
現在明示されているのは以下2点です。
①育休取得を推奨する職場環境の提供(研修実施や、個別相談窓口の設置)
具体的な内容については、厚生労働省が提示する複数の選択肢より、企業側がいずれかを実行する形式が想定されています。
②妊娠、出産を申し出た本人または配偶者に対して、育休情報の個別通知と意向確認
通知方法については、面談による口頭説明や書面による情報提供など、複数の手法から選択し実行する形式が想定されています。
産休や育休の取得が国として認められているにもかかわらず、職場環境によって従業員が取得を躊躇してしまうような状況は回避しなければなりません。
理不尽な境遇により従業員が与えられた権利を行使できない事態を招かぬよう、職場改善を最適化する必要性が高まっています。
有期雇用労働者に対する要件が緩和
期間に定めのある雇用契約で働く従業員に対する育休取得要件が緩和されます。
まず法改正前の育休取得要件は、以下2点です。
①引き続き雇用された期間が1年以上
②1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない
(引用:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内)
そして今回の法改正では、①の撤廃が決定されました。
よって雇用期間にかかわらず、育休の取得が可能です。
ただし、①に関して別途労使協定を締結している場合は、この限りではありません。
育児・介護休業法の改正ポイント【令和4年10月頃施行】
続いては、令和4年10月頃に施行予定の2点について解説します。
男性の産休・育休を推進する「出生時育児休業」の新設
今回の育休法改正で高い注目を浴びているのが、男性の育休取得を後押しする出生時育児休業制度の新設です。
子の出生後8週までの間に4週間まで、男性の育休取得が認められます。
またこの4週間の育休は2回に分割して取得が認められているため、各々の家庭事情に柔軟に対応できるようになります。
上記に加え、育休申出期限が休業1ヶ月前から2週間前までに短縮されました。
この法改正により、女性の産休~育休を男性がよりサポートしやすい環境が整います。
育児休業を2分割で取得可能
新設となった上記の出生時育児休業とは別に、従来の育休に関しても2回に分割して取得可能となります。
従来では分割での取得不可、かつ1歳を超えた段階で育休延長を希望する場合、育休開始日は1歳または1歳半時点に限定されていました。しかし法改正後は、育休開始日が柔軟化されます。
育児・介護休業法の改正ポイント【令和5年4月1日施行】
今回の育休法改正で最後の施行となるのが、育休取得状況の公表の義務化です。
公表対象は今後省令により定められますが、以下が想定されています。
・男性の育休等の取得率
・育休等と育児を目的とする休暇の取得率
上記の公表により、男性の育休取得が世間的に標準化されることが期待されます。
なお上記は、従業員が1,000人を超える大企業に限ります。
現時点で中小企業は含まれていませんが、今後対象が拡大する可能性も考えられるため、動向は注視しておきましょう。
育休法改正に備え社内規程改定の準備を忘れずに
人事担当者が忘れてはならないのは、法改正に伴う社内規程の改定です。
今回の育休法改正に関しては現時点で未確定の部分もあるため、引き続き動向を見守る必要があります。
しかし社内規程の改定には思いのほか多くのタスクが発生するため、直前でバタつくことのないよう計画的に着手していきましょう。
また妊娠・出産を控える従業員にとっては、出産後の育休だけでなく、出産前の産休も欠かせない制度です。
今回の育休法改正を足がかりに、産休の運用に関しても見直しも行っておくと良いでしょう。
男女の垣根を超えた育休の普及と一般従業員へのケアを両立し安心できる職場づくりを
今回の育休法改正は、男女の垣根を超えた育休を推進する大きなきっかけとなるはずです。
これは既婚の従業員に限らず、「今は具体的な予定はないけれど、将来は結婚し子供を持ってみたい」という従業員に対しても、将来の選択肢を広げる改正となるでしょう。
企業は作られた法律をいかに自社に普及、定着させるかという点と向き合う必要があります。
そして同時に気を配らなければならないのは、産休育休取得者が属するチームメンバーへのサポートです。
産休育休を取得する当事者にとってはあっという間の時間でも、残された従業員にとっては決して短い時間ではありません。
産休育休期間にその他の従業員に過度な負担が集中しないよう、人事や所属長による適切な取り計らいが必須です。