労基署の臨検とは?調査の流れやチェックされるポイントを解説

企業にとって、「臨検」と呼ばれる労働基準監督署の調査は非常に関心が高いものだと思います。しかし、臨検の目的や調査の流れなどその実態については詳しく知らないという方も多いでしょう。

今回の記事では「労基署の臨検」について、調査の目的や流れ、チェックされるポイントなどを解説します。実態を理解すれば、日頃から臨検に備えたクリーンな職場づくりを行えるようになります。

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臨検とは

臨検監督(通称・臨検)とは、労働基準監督官が企業を訪れて、労働基準法や労働安全衛生法などを遵守した経営を行っているかどうかを確認することです。労働基準監督官は法律によって強制的に企業の立ち入り調査を行える権限が付与されているため、原則として企業は臨検を拒否することはできません。

また、臨検には「定期監督」「申告監督」「災害時監督」「再監督」の4つの種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

定期監督

最も一般的な臨検で、労基署があらかじめ計画した基準に基づいて選んだ企業を対象に、定期的に実施されます。毎月行われるため、法令遵守を徹底している企業でも定期監督の対象となるケースがあります。

申告監督

従業員からの申告を受けた場合に、申告の内容および真偽を確認するために行う調査です。申告の方法は、従業員から申告があったことを明かしたうえで呼び出し状を発行する場合と、申告監督であることを明かさずに定期監督と同じように行う場合の2     種類があります。

災害時監督

労働災害が発生した場合に、原因の追究や再発防止を目的として行われる調査です。

再監督

是正勧告されている企業に対して再度行われる調査です。再監督は、是正勧告された違反内容が是正されているかを確認する場合、または是正報告書を期日までに提出しなかった場合のいずれかに行われます。

臨検で法令違反があった場合に行われる対応

臨検で法令違反が見つかった場合はどのような対応が行われるのでしょうか。ここでは、臨検で法令違反があった場合の種類と対応について解説します。

指導票の交付

指導票は、法令違反ではなくとも改善の必要があると判断された場合に交付されます。行政指導にあたるもので、指導票を交付された場合は改善報告書を作成して期日までに労働基準監督署へ提出しなければなりません。

是正勧告書の交付

是正勧告書は、法令違反があった場合に交付されます。是正勧告は行政指導であり法的な強制力はないため、その場で罰金が科されるといったことはありません。しかし、是正勧告を無視した場合やあまりにも悪質だと判断された場合は、書類送検されるリスクもあります。こうしたリスクを避けるためにも、是正勧告書を交付されたら正しく改善し、期日までに労働基準へ是正報告書を提出しましょう。

使用停止等命令書の交付

使用停止等命令書は、安全衛生基準に違反している場合や職場環境の不備・不具合によって従業員に緊迫した危険があると判断された場合に交付されます。行政処分となり法的拘束力があるため、命令に従わない場合は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられる可能性があります。行政処分になると従業員やクライアントに対しても多大な影響を及ぼすため、日頃から法令遵守を心掛けることが重要です。

臨検の流れ

続いて、臨検の流れについて解説していきます。いざ臨検が実施された場合でも、慌てることのないようにしっかり流れを掴んでおきましょう。

①臨検の事前通知

臨検は、隠ぺいや偽装を防ぐために原則として予告せずにいきなり労働基準監督官が訪れて調査を行う場合があります。ただし、担当者や責任者が不在で対応が難しい場合には、相談次第で日程調整も可能です。

一方、帳簿や書類の準備が必要な場合は電話や書面で事前に通知を行います。基本的には事前通知を行うケースが多いでしょう。

②臨検の実施

調査当日は労働基準監督署から監督官が2名派遣され、調査を実施します。労働基準監督官は身分を明かし、訪問の目的を伝えたうえで企業の担当者または責任者との面会を要求します。

調査の順番に決まりはありませんが、以下のような流れで調査が行われるケースが一般的です。

1)労働関係帳簿の確認
2)書類や勤務実態の確認などを伴う事業主または責任者へのヒアリング
3)事業場内の立ち入り調査と勤務実態の確認などを伴う従業員へのヒアリング
4)口頭での改善指導や指示

③臨検の結果報告【是正勧告・改善指導】

調査終了後、当日その場で、もしくは後日労働基準監督署から調査の結果が報告されます。法令違反や改善点があった場合は、是正勧告書や指導票を交付され、行政指導を受けることになります。書類に記載されている期日までに内容を確認し、速やかに是正・改善を行いましょう。

調査の結果、使用停止等命令書が交付された場合には、行政処分となります。

④是正勧告書の提出

調査の結果、是正勧告書や指導票が交付されたら、期日までに違反内容を改善して労働基準監督署に是正報告書(指導票の場合は改善報告書)を提出する必要があります。無事に提出を終えたら、この時点で調査は完了です。

報告書類を提出しない・是正が認められないといった場合には再度臨検が実施されることになるので、必ず指摘箇所の改善および報告書提出を行いましょう。

臨検の必要書類とチェックされるポイント

臨検にスムーズに対応するためには、事前の準備が非常に重要です。ここでは臨検に向けて準備しておく必要書類と当日チェックされるポイントを解説しますので、しっかり押さえておきましょう。

必要書類

労働基準法および労働安全衛生法の遵守の証明に必要な書類は以下の通りです。

必要書類
労働基準法・企業の組織図
・労働者名簿
・賃金台帳
・雇用契約書
・就業規則
・タイムカード(出勤簿)
・時間外、休日労働に関する協定届
・変形労働時間制を採用している場合の関係書類
・変形労働時間制のシフト表
・年次有給休暇の取得状況の管理表
労働安全衛生法・健康診断の個人票
・安全委員会、衛生委員会の選任状況が分かる書類
・安全委員会、衛生委員会の設置・運営状況が分かる資料
・産業医の選任状況が分かる書類

チェックされるポイント

臨検で主にチェックされるのは、一般労働条件と安全衛生の2つの項目です。それぞれのチェックポイントを見ていきましょう。

【一般労働条件】チェックポイント
事業場・労働者関係・事業の名称、所在地、事業内容、経営内容
・事業主の氏名
・労働者名簿
・派遣労働者の有無、請負企業の有無、外国人労働者の有無、技能実習生の有無
労働条件・労働条件通知書
・就業規則
・就業規則の通知状況
労働時間・労働時間の記録
・変則労働時間制の労使協定
・時間外、休日労働に関する協定届
・時間外、休日労働の現状把握
・管理監督者の範囲
賃金・賃金台帳
・賃金控除協定書
・時間外手当、休日労働手当等の支払い状況
・時間外手当、休日労働手当等の計算方法
・最低賃金
年次有給休暇・年次有給休暇の取得状況
・年次有給休暇の取得記録
・年次有給休暇の取得手続き

 

【安全衛生】チェックポイント
安全衛生管理・安全衛生推進者等の選任状況
・産業医の選任状況
・安全衛生委員会等の設置状況
健康管理・健康診断の実施記録
・事後措置の状況
・過重労働の有無
・健康診断結果報告の状況


参考:労働基準監督署対策相談室

臨検で指摘されやすいポイント

臨検で特に指摘されやすいのは、労働時間や健康診断の関連業務です。

労働基準法第36条(通称・36協定)において、従業員の労働時間の上限が定められています。長時間労働や過重労働が常態的に行われていると、従業員の健康障害のリスクが高まると同時に法令違反となるケースがあるため早急な是正が必要です。従業員の勤怠管理を徹底して、従業員の健康を維持できるような職場づくりを心がけましょう。

また、労働安全衛生法により企業は年1回の健康診断の実施が義務付けられています。健康診断の実施を怠ると法令違反となってしまうので、必ず実施しなければなりません。併せて健康診断の結果に基づいた事後措置を的確に行うことは、安全配慮義務の観点からも重要といえるでしょう。臨検の実施の有無に関わらず、従業員の心身の健康と安全に配慮した職場環境の整備を普段から徹底することが大切です。

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臨検にスムーズに対応するには、日頃の書類整備を徹底することが重要です。その中でも、安全衛生に関わる健康診断の実施記録や健診結果、事後措置の記録などは、業務効率化の観点からもデータ化しておくと良いでしょう。

また、過酷な業務環境で従業員が疲弊していないかどうかを、ストレスチェックや健康診断の結果から分析して早期対処することは、是正勧告が生じないことのみならず従業員の心身の健康を維持するための職場づくりにも欠かせません。このように、法令遵守を徹底した環境づくりを行うには健康管理システム「WELSA」が役立ちます。

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