従業員の健康管理はなぜ必要?企業でできる対策とポイントを解説

nazekenkou

近年、従業員の健康管理を重視する健康経営に取り組む企業が増えています。少子高齢化が進むなか、従業員が長く元気に働けるよう環境を整えることは非常に重要です。働きやすい職場になれば、人材の定着化にもつながるでしょう。
この記事では従業員の健康管理について、企業で取り組みたい対策やポイントをまとめました。そのほか活用できる制度や、健康管理システムの選び方までご紹介しています。健康管理の基本を理解して、魅力ある職場づくりを目指しましょう。

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従業員の健康管理とは?

企業における健康管理とは従業員の健康状態を把握し、維持や向上させるための取り組みを実施することです。少子高齢化が進み、労働人口が減少し続けている日本には、人材不足の課題があります。体調不良やケガなどが原因となって従業員の離職・退職が起きると、結果として企業の生産性低下にもつながります。
従業員に元気に働き続けてもらうためには、健康管理を経営的な視点で考える健康経営が重要です。経済産業省の「アクションプラン2022」でも健康経営のさらなる促進に向け、「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」などの取り組みを強化する考えを示しています。今後、健康経営に取り組む企業はさらに増えると予想されるでしょう。

健康管理を経営的な視点でとらえる「健康経営」

健康経営とは従業員の健康管理や、健康を増進するための取り組みを戦略的に実施する手法です。従業員の健康を維持する以外に、次のメリットがあると言われています。

  • 従業員の活力向上による労働生産性アップ
  • 職場の環境改善がもたらす従業員の離職率低下
  • 企業が負担する医療費の削減
  • 企業イメージが高まり、人材確保につながる

従業員が心身ともに健康であれば、医療費が減るだけでなく、個々のパフォーマンスをしっかり発揮できるようになります。結果、組織が活性化し、業績向上にもつながるでしょう。
さらに先に解説した「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に認定されれば企業の価値が向上し、有能な人材を確保できるチャンスが増えます。人材不足の問題を抱える日本では、これから健康経営の考え方が非常に重要になってくるといえるでしょう。
一方で健康経営に取り組まない場合、以下のデメリットが生まれる場合があります。

  • 休職者の増加に伴う、採用費などのコスト負担
  • 事故や自殺などによる訴訟リスクと風評被害、企業のイメージダウン
  • 従業員の熱意や活力などのエンゲージメント低下

上記のようにもはや従業員個人の問題だけでなく、企業に不利益が生じる原因にもなるのです。企業側は健康経営の重要性をしっかり理解して、真摯に取り組む必要があります。

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労働法で明文化された安全配慮義務

平成20年3月に施行された労働契約法第5条では、安全配慮義務が明文化されました。

引用:労働契約法のあらまし|厚生労働省

「生命・身体等の安全」には、心身の健康も含まれます。つまり、企業は労働者が安心し、納得して働けるような職場環境を整えなければならないということです。過重労働やハラスメントなどで安全配慮義務に違反し、損害賠償請求が発生した事例もあります。企業は労働環境を把握し、事前に対策を行うことが大事です。
労働安全衛生法を代表とする労働安全衛生関係法令にも、具体的に企業側が講ずるべき措置が記載されています。安全衛生管理体制の確立もその措置のひとつです。次に詳しく説明しますので注目してみてください。

健康管理のポイント5つ

次に、企業で健康管理を進めるために必要なポイントを5つご紹介します。

1. 安全衛生管理体制を確立させる

企業は労働災害を防止するため、事業場の規模や人数に応じて安全衛生管理体制を整備しなければなりません。具体的には事業場をひとつの単位として、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者および産業医を配置する必要があります。
規模や業種の条件については、以下の画像や表でそれぞれ確認してください。
【総括安全衛生管理者の選任】

引用:安全衛生管理体制のあらまし|厚生労働省

【安全管理者の選任】

引用:安全衛生管理体制のあらまし|厚生労働省

【衛生管理者および産業医の選任】

事業場の規模(常時使用する労働者数)衛生管理者産業医
50~200人1人1人
201~500人2人1人
501~1,000人3人1人
1,001~2,000人4人※衛生管理者のうち1人は専任1人※専属産業医の選任が必要
2,001~3,000人5人※衛生管理者のうち1人は専任1人※専属産業医の選任が必要
3,001人以上6人※衛生管理者のうち1人は専任2人以上※専属産業医の選任が必要

また、労働安全衛生法第18条により、従業員が常時50人以上いる事業場は、衛生委員会を設けなければなりません。
10~49人規模の事業場は安全管理者と衛生管理者は必要ありませんが、安全衛生推進者または衛生推進者の選任が義務付けられています。具体的な業務内容は健康診断や従業員の安全を守るための教育の実施などです。健康診断については次に詳しく説明します。

2. 定期的に健康診断を実施する

企業は適切なタイミングで、従業員に健康診断を受けさせなければなりません。実施が義務付けられている健康診断の種類は以下の通りです。
【健康診断の種類】

種類対象内容
雇入時の健康診断新しく雇用する従業員
定期健康診断全従業員1年ごとに1回
特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第13条第1項第2号に記載されている業務に関わる従業員・業務の配置替えの際・6か月ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断海外に6か月以上派遣する従業員・海外派遣の前・帰国後、国内の業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する従業員・新しく雇用する際・配置替えの際

さらに企業側は、健康診断結果の記録や医師からの意見聴取などが必要です。診断結果によっては作業内容の見直し、保険指導の実施などに努めなければいけません。

3. 従業員へ教育の実施

労働安全衛生法第59条第1項および第2項により、新しく従業員を雇う際は必ず安全衛生教育をしなければなりません。作業内容を変更した際も同様で、育が必要な項目です。

厚生労働省では経験の少ない労働者に対する安全衛生教育マニュアルを用意しているので、うまく活用してみてください。

4. メンタルヘルス対策

近年、職場に対する不安や仕事でのストレスで、心の健康を損なう方が増えています。企業は「心の健康づくり計画」を作成したり、その対策を実施したりする必要があります。
「心の健康づくり計画」を策定するためには、4つのメンタルヘルスケアを計画的に進行することが重要です。

引用:職場における 心の健康づくり|厚生労働省 独立行政法人労働者健康福祉機構

上記の取り組みを進めていくためには企業内だけでなく、産業医や専門家などの外部の協力が必要不可欠です。さらに従業員の個人情報保護に対する配慮も重要となります。

5. 労働時間を把握し過重労働を防ぐ

人手不足に陥っている業種は、従業員ひとりひとりに負担がかかりやすく過重労働が起きやすい傾向にあります。厚生労働省の資料によると、時間外・休日労働時間が増えるにつれ、健康障害のリスクが高まることがわかっています。

引用:過重労働による 健康障害を防ぐために 過重労働による 健康障害を防ぐために|厚生労働省

36協定では、時間外労働の上限が定められています。特別な理由がない限り、月45時間・年360時間以上の時間外労働をさせることができません。厚生労働省では時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめるよう呼びかけています。
やむを得ず限度時間を超えて労働させる場合は、従業員の健康を確保するための取り組みが必要です。その代表として、長時間労働をしている従業員に対する産業医の面接指導制度があります。従業員は医師の問診を受けたうえで、健康管理の指導を直接受けることができます。

従業員の健康管理のために活用できる制度

従業員の健康管理に対し、どんなことから始めればいいかわからない場合は、制度を活用するのもひとつの手です。たとえば以下の制度が役に立ちます。
【健康管理に関わる制度一覧】

名称内容
受動喫煙防止対策助成金従業員の健康保護のため、職場の受動喫煙を防止する措置を講じた企業に対し、設備の導入費用などを支援。
メンタルヘルス対策支援センター事業47都道府県に設置された同センターで、メンタルヘルス対策の相談ができたり、専門家による指導を受けたりできる。
職場意識改善助成金(職場意識改善・改善基盤整備コース)時間外労働の削減や、有給の取得促進に取り組む中小企業事業主を助成金で支援。
中小企業労働環境向上助成金健康づくりに関する取り組みや、処遇の改善を行う企業が利用できる助成金。
働き方・休み方改善コンサルタントによる相談、助言・指導各都道府県労働局に在籍するコンサルタントが、有給休暇の取得促進や、長時間労働の予防対策などのアドバイスを提供。

健康管理を効率よく行えるシステム

近年では、従業員の健康管理を効率よく行えるシステムも多く開発されています。健康管理業務は健康診断の予約から、書類の整理まで作業量が膨大なので、システムで一元管理できるようになると担当者の負担軽減につながります。
特に以下の機能が備わった健康管理システムを導入すると便利です。

  • 従業員のストレスチェック機能
  • データ集計、分析機能
  • 健康増進サポート機能
  • ストレスチェックや健康診断の結果などをまとめて集計・分析できれば、健康リスクが予測でき、労働環境の改善に役立てられます。さらに結果をもとにセミナーや改善プログラムを提供してくれるシステムなら、担当者の負担をぐっと軽くすることができるでしょう。
    健康管理システムを導入しても「操作が難しくて使いこなせない」「健康診断結果をインポートする方法がわからなくてうまく使えなかった」といった声もよく聞きます。操作性のよさやデータ化のサポートも検討のポイントになります。
    そのほか過重労働チェックやオンライン面談機能も、必要に応じて検討してみてください。

    人材不足対策は従業員の健康管理が必須

    少子高齢化の影響でさらなる人手不足が予想される日本では、企業における従業員の健康管理は非常に重要です。企業の成長・存続させるためにも、これからは健康経営の視点が大事になってきます。健康経営を進めることで魅力ある職場となり、人材の確保や定着につながる可能性も高いのでぜひ検討してみましょう。
    従業員の健康管理を効率よく行うには、健康管理システムの導入も効果的です。ストレスチェック機能やデータ分析機能がついた「WELSA」なら、健康管理を一元化できます。健康増進サポート機能もあるので、健康経営の促進に役立つはずです。

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